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まかない婦のまかない②
第3話『とろっとハヤシライス』②
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この料理は題して。
「オムハヤシと言います」
「「オムハヤシ??」」
「アーネストさんは少し聞き覚えがあると思います。陛下とお話した時に『オムライス』の提案をしました」
「……あの料理なのか??」
「やり方は似てますが、具材とかが違います」
オムライスは、ケチャップで味をつけたライス。
オムハヤシでもなくはないが、今回はただの白米。
卵を巻くのも同じだが、オムライスは基本的にケチャップをかけるくらい。オムハヤシについてはデミグラスソースかハヤシルゥ。
それをおふたりに伝えると、感心したような表情になった。私もお母さんに聞くまでは、こんな表情をしたかもしれない。自分で作れるようになるとは思わなかったが。
とりあえず、熱いうちが美味しいのでおふたりに勧めてから私も食べることにした。
(深夜に炭水化物……しかも二杯目)
だが、まかない研究……もとい、現実世界の料理を再現するのはだいたい深夜が多い。アーネストさんに食べていただくだけでなく、養父である料理長や他の厨房の人達にも食べてもらっている。一人で何人もの厨房のまかないを請け負うから、出来る料理も定食よりかは丼ものや大皿料理になってしまうのだ。
栄養価が偏らないように気をつけているが、皆さんにも美味しいと言ってもらえてる。だから、ついつい深夜の再現時間には自分でも太るメニューを作ったりしているが。
(……あんまり太らないんだよね??)
胸はコンプレックスなくらいでかいが、今はアーネストさんに買っていただいた防具でほぼぺったんこ。そこはいいが、お腹も足も特に太らない。暴食とまでいかないが、あれだけ食べているのに??
何か、私の体にトリップ特典でもついたのかと思うのだ。
「「んん!!?」」
「チーズとハヤシって、合うんやなあ? トロトロでまろやかでええわあ!! 俺これ食堂で出たら、毎日でも食べたい!!」
「それは同感だ!!」
「ふふ。料理長に提案してから、ですが」
「先輩かぁ~……」
元冒険者のレクサスさんにとって、料理長のワルシュさんは憧れの的でもあるが、実質先輩と後輩でもあったそうだ。料理長ほどではないが、レクサスさんもそれなりにランクの高い冒険者さんだったそうで。話を聞く限り、相当鍛えられたらしい。
私もちょっとだけ冷めたオムハヤシを食べてみた。予想通りの味だが、トロトロ卵がうまくいってよかった。出来れば、シンデレラとかたんぽぽとか呼ばれるオムレツの焼き方が可能なら見た目も美しいが。私にはそこまでの技術はない。
「だが、料理長は何かしらイツキに甘い傾向がある。わりかしすぐに採用されそうだが」
「そうでしょうか?」
「少なくとも、厨房の人間には食べさせているだろう?」
「ふふ、そうかもしれません」
たしかに、天津炒飯が始めで、色々採用はされたけれど。最近は副料理長と張り合って、カレーをドリアかライスで食べるかで、よく言い合っている。
こんな穏やかな生活が送れるのも、ここに来て皆さんと出会ったお陰だ。
その手助けをしてくださった、ネルヴィスさんには幸せになっていただきたい。
「オムハヤシと言います」
「「オムハヤシ??」」
「アーネストさんは少し聞き覚えがあると思います。陛下とお話した時に『オムライス』の提案をしました」
「……あの料理なのか??」
「やり方は似てますが、具材とかが違います」
オムライスは、ケチャップで味をつけたライス。
オムハヤシでもなくはないが、今回はただの白米。
卵を巻くのも同じだが、オムライスは基本的にケチャップをかけるくらい。オムハヤシについてはデミグラスソースかハヤシルゥ。
それをおふたりに伝えると、感心したような表情になった。私もお母さんに聞くまでは、こんな表情をしたかもしれない。自分で作れるようになるとは思わなかったが。
とりあえず、熱いうちが美味しいのでおふたりに勧めてから私も食べることにした。
(深夜に炭水化物……しかも二杯目)
だが、まかない研究……もとい、現実世界の料理を再現するのはだいたい深夜が多い。アーネストさんに食べていただくだけでなく、養父である料理長や他の厨房の人達にも食べてもらっている。一人で何人もの厨房のまかないを請け負うから、出来る料理も定食よりかは丼ものや大皿料理になってしまうのだ。
栄養価が偏らないように気をつけているが、皆さんにも美味しいと言ってもらえてる。だから、ついつい深夜の再現時間には自分でも太るメニューを作ったりしているが。
(……あんまり太らないんだよね??)
胸はコンプレックスなくらいでかいが、今はアーネストさんに買っていただいた防具でほぼぺったんこ。そこはいいが、お腹も足も特に太らない。暴食とまでいかないが、あれだけ食べているのに??
何か、私の体にトリップ特典でもついたのかと思うのだ。
「「んん!!?」」
「チーズとハヤシって、合うんやなあ? トロトロでまろやかでええわあ!! 俺これ食堂で出たら、毎日でも食べたい!!」
「それは同感だ!!」
「ふふ。料理長に提案してから、ですが」
「先輩かぁ~……」
元冒険者のレクサスさんにとって、料理長のワルシュさんは憧れの的でもあるが、実質先輩と後輩でもあったそうだ。料理長ほどではないが、レクサスさんもそれなりにランクの高い冒険者さんだったそうで。話を聞く限り、相当鍛えられたらしい。
私もちょっとだけ冷めたオムハヤシを食べてみた。予想通りの味だが、トロトロ卵がうまくいってよかった。出来れば、シンデレラとかたんぽぽとか呼ばれるオムレツの焼き方が可能なら見た目も美しいが。私にはそこまでの技術はない。
「だが、料理長は何かしらイツキに甘い傾向がある。わりかしすぐに採用されそうだが」
「そうでしょうか?」
「少なくとも、厨房の人間には食べさせているだろう?」
「ふふ、そうかもしれません」
たしかに、天津炒飯が始めで、色々採用はされたけれど。最近は副料理長と張り合って、カレーをドリアかライスで食べるかで、よく言い合っている。
こんな穏やかな生活が送れるのも、ここに来て皆さんと出会ったお陰だ。
その手助けをしてくださった、ネルヴィスさんには幸せになっていただきたい。
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