上 下
51 / 782
隊長のまかない②

第3話『びっくり幕の内弁当』③

しおりを挟む
 驚きました……!!

 酸っぱ過ぎて、けど塩気もあり……しばらくしたら、口の中でさっぱりとしてしまう。普通のピクルスとは全く違いました。この爽やかさはなんでしょう??

 あれだけ揚げ物を食べたのに、口の中がリフレッシュしていくような……?


「……とても驚きました」

「だ、大丈夫ですか?」

「ええ。ひと口で勢いよく食べたせいですね? しかし、後口が爽やかです」

「私がいたところだと『梅干し』と呼んでいたんですが……おにぎりの具材にも出来ますし、先日リュシアーノ様にも召し上がっていただいた『焼きおにぎりのお茶漬け』にも少々入れました」

「なるほど……。口直しにピクルスとは斬新ですね?」


 その後にリーゾを口に含むと、もっと食べたい欲求が出てきました。他にも、ほうれん草などのサラダとも違う料理は……リーゾをもっと食べたくなるような味わいです。

 この『マクノウチ弁当』と言うのは、すべてがあって完璧なお弁当になるのですね!?

 イツキがニコニコと見守りながら、僕はゆっくりとしかし、アーネストがいつ戻って来るかわかりませんので……少し急いで食べました。

 揚げ物以外にも、肉を焼いて丸め……少し甘辛い味付けをしたのも僕は好みでした。


「そちらはテリヤキハンバーグです」

「テリヤキ? ハンバーグは僕にもわかりますが……」


 ハンバーグはこんなにも柔らかいものだったでしょうか? ソースもこのように甘辛く食べやすい味付けではない。たしか……デミグラスソースが主で、もっと肉肉しく食べにくいイメージが強い。


「ツナギとこね方にコツがあるんです。こちらのハンバーグは男性向けですが、私のいた世界ですとハンバーグは多種多様。こちらに似た感じのですと海を越えた国に多いです。テリヤキについては私の出身国に多い味付けですね?」

「……その口ぶりですと、他にも何か??」

「はい。テリヤキはお肉とよく合いますし……鶏肉とかこちらですとコカトリスの肉にも合いそうですね?? 皮をあえて残して焼いたのに絡めると……テリヤキソースと抜群に合います」

「それは……」


 今食事をしているのに、思わず食べたくなる料理だった。本当に……この女性は異邦人であれ、料理に関しては素人だとは思えません。

 であれば、異世界の料理人の玄人はどれほどの逸材か。ワルシュ料理長が知れば引き抜きどころで済まないでしょう。


「あ、テリヤキチキンと言うのが今試作段階ですので。食堂には近々お出し出来ると思います」

「! わかりました」


 それは楽しみにしていなくてはいけませんね?


「ところで、ネルヴィスさん。何かお話があると言っていましたが」


 だいたいを食べ終えたところで、イツキが質問をしてきました。

 そう。イツキと二人で過ごす時間は限られているので……時間は有効に使わなくてはいけません。だから、お弁当以外に話があると僕は彼女に通達の返事をしました。


「……実は、折り入って相談させていただきたいことが」

「私にですか?」

「ここにいるのは僕とあなただけです。是非聞いて欲しいんです」

「……なんでしょうか?」


 イツキは意味がわからないので首を傾げていましたが、無理もないでしょう。今から告げるのは、とびっきり驚く内容ですから。


「……いえ。僕にもある意味春が来たなと」

「!? それって好きなお相手さんが?!」

「ただ……あなたとアーネストとは別の意味で障害があるんです」

「? どなたなんでしょうか??」

「……………………王女殿下です」

「…………えええええぇええぇ!?」


 流石のイツキでもその場にひっくり返ってしまいました。
しおりを挟む
感想 319

あなたにおすすめの小説

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします

吉野屋
ファンタジー
 竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。  魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。  次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。 【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】  

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。