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騎士のまかない⑥
第4話『魅惑のカレードリア』②
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これが……『カレードリア』と言う料理なのだろうか??
凄くいい匂いだが、真っ白なこれはなんだろうか??
真っ白で、少し焦げ目があって……しかしながら、暴力的に胃袋を刺激してしまうくらい、俺の食欲を奮い立たせてくれた。
これを食べたい、胃袋に収めたいと言う力が湧いてくる。
「熱いので、あちらで食べましょう?」
イツキが案内してくれたのが、彼女が住まう管理室だった。あそこに通されたのはほぼない……が、彼女は単純に今厨房が人で溢れかえっているので気遣ってくれたのだろう。だから、わかったと俺は頷いてイツキの後に続いた。
ベッドとシャワー室以外簡素な作りでしかない部屋は、独身寮にある俺の部屋よりもずっと狭い。そんな中で恋人であるイツキと二人きり……先程の暗い考えが吹き飛ぶくらい、意識が切り替わってしまう!?
卓の方はイツキが書き物をする大きさしかないため、ベッドに腰掛けて盆を膝の上に載せるくらいしか出来ない。
盆越しに伝わってくる熱さに、意識が集中したためか改めてカレードリアの外観を見てみた。
(……やはり、真っ白だ)
シチューのような、だがまるで違う香辛料の強い香り。その上に焦げ目がついているのはチーズだと俺でもわかる。これは……どう言う料理なのか、まるで検討もつかない。
「カレーと言うのは、香辛料を液体状にした料理なんです。それを米にかけたりして一緒に食べるんですよ」
「昼間の『オヤコドン』とかと似ているのか?」
「カレー丼ですね? 需要は少ないですが、なくはないです。丼とライスは全然違うんですよ!」
「そ、そうか」
熱弁するイツキは見たことがなかったので、新鮮に見えた。今日でいくつもの彼女の表情を見てきたが、また新たな発見だった。
「それと、普通のカレーじゃなくて『白いカレー』を作ってみたんです」
「? こう言うものではないのか??」
「普通は茶色いソースみたいなんですけど、今日はまろやかな味にしたくて香辛料以外に牛乳を使ったんです」
「……汁物に牛乳?」
「シチューもそうですよ?」
「……そうか」
まだまだ俺は料理について知らないことだらけだ。
だが、俺の本分は近衛騎士団の副隊長。職務を怠ってもいけないが、恋人の領分を理解すれば彼女との話題がもっと広がっていく。
スプーンだけで食べるようなので……スプーンでゆっくりすくい上げてみた。すると、中の米が黄色に染まっていたのだ!?
「サフランって言う染料にも使われる香辛料で色付けしたんです。味はほとんど米と変わりありません」
「……では」
白いソースもだが、チーズもすごく伸びる。そして、湯気が尋常じゃない! だから、息を吹きかけて少し冷ます。食堂が出来たばかりの頃もだが、出来立ての熱々の料理を食すだなんて、実家の公爵家でもそんな料理を食べたことがほとんどない。
勢いよく息を吹きつけて、口に入れてみる。とろっと……しかしながら、濃い香辛料の香りと味が口いっぱいに広がって来た。
(……美味!?)
スープと米が一緒になるのはリゾットやオジヤで知ってはいたが……これは全然違う!!
シチューのようなソースと黄色い米が合わさった味わいが、なんとも言い難い幸福感を俺に与えてくれた。加えて、焼いたチーズのまろやかさがソースにいくらか感じる辛味を抑えてくれている。
熱いが、これは次……次と食べたくなる料理だった。ほふほふと言いながら、夢中で食べてしまう!!
「ふふ。気に入っていただけてよかったです」
イツキもゆっくりと食べていた。貴族程ではないが、綺麗な所作で……気力が戻ってきた俺は、その薄ピンク色の唇に自分のを重ねたい気分になってしまったが、我慢した。
(事情はなんであれ……この人と共にいたいのには変わりない)
それだけは、俺の最上の願いなのだから。
凄くいい匂いだが、真っ白なこれはなんだろうか??
真っ白で、少し焦げ目があって……しかしながら、暴力的に胃袋を刺激してしまうくらい、俺の食欲を奮い立たせてくれた。
これを食べたい、胃袋に収めたいと言う力が湧いてくる。
「熱いので、あちらで食べましょう?」
イツキが案内してくれたのが、彼女が住まう管理室だった。あそこに通されたのはほぼない……が、彼女は単純に今厨房が人で溢れかえっているので気遣ってくれたのだろう。だから、わかったと俺は頷いてイツキの後に続いた。
ベッドとシャワー室以外簡素な作りでしかない部屋は、独身寮にある俺の部屋よりもずっと狭い。そんな中で恋人であるイツキと二人きり……先程の暗い考えが吹き飛ぶくらい、意識が切り替わってしまう!?
卓の方はイツキが書き物をする大きさしかないため、ベッドに腰掛けて盆を膝の上に載せるくらいしか出来ない。
盆越しに伝わってくる熱さに、意識が集中したためか改めてカレードリアの外観を見てみた。
(……やはり、真っ白だ)
シチューのような、だがまるで違う香辛料の強い香り。その上に焦げ目がついているのはチーズだと俺でもわかる。これは……どう言う料理なのか、まるで検討もつかない。
「カレーと言うのは、香辛料を液体状にした料理なんです。それを米にかけたりして一緒に食べるんですよ」
「昼間の『オヤコドン』とかと似ているのか?」
「カレー丼ですね? 需要は少ないですが、なくはないです。丼とライスは全然違うんですよ!」
「そ、そうか」
熱弁するイツキは見たことがなかったので、新鮮に見えた。今日でいくつもの彼女の表情を見てきたが、また新たな発見だった。
「それと、普通のカレーじゃなくて『白いカレー』を作ってみたんです」
「? こう言うものではないのか??」
「普通は茶色いソースみたいなんですけど、今日はまろやかな味にしたくて香辛料以外に牛乳を使ったんです」
「……汁物に牛乳?」
「シチューもそうですよ?」
「……そうか」
まだまだ俺は料理について知らないことだらけだ。
だが、俺の本分は近衛騎士団の副隊長。職務を怠ってもいけないが、恋人の領分を理解すれば彼女との話題がもっと広がっていく。
スプーンだけで食べるようなので……スプーンでゆっくりすくい上げてみた。すると、中の米が黄色に染まっていたのだ!?
「サフランって言う染料にも使われる香辛料で色付けしたんです。味はほとんど米と変わりありません」
「……では」
白いソースもだが、チーズもすごく伸びる。そして、湯気が尋常じゃない! だから、息を吹きかけて少し冷ます。食堂が出来たばかりの頃もだが、出来立ての熱々の料理を食すだなんて、実家の公爵家でもそんな料理を食べたことがほとんどない。
勢いよく息を吹きつけて、口に入れてみる。とろっと……しかしながら、濃い香辛料の香りと味が口いっぱいに広がって来た。
(……美味!?)
スープと米が一緒になるのはリゾットやオジヤで知ってはいたが……これは全然違う!!
シチューのようなソースと黄色い米が合わさった味わいが、なんとも言い難い幸福感を俺に与えてくれた。加えて、焼いたチーズのまろやかさがソースにいくらか感じる辛味を抑えてくれている。
熱いが、これは次……次と食べたくなる料理だった。ほふほふと言いながら、夢中で食べてしまう!!
「ふふ。気に入っていただけてよかったです」
イツキもゆっくりと食べていた。貴族程ではないが、綺麗な所作で……気力が戻ってきた俺は、その薄ピンク色の唇に自分のを重ねたい気分になってしまったが、我慢した。
(事情はなんであれ……この人と共にいたいのには変わりない)
それだけは、俺の最上の願いなのだから。
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