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第139話 薄情かも

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 どんなに、忘れようとしても。

 振り返らないと決めたとしても。

 辛かった。

 悲しかった。

 故郷が……もう無くなってしまったことについて。

 大精霊になったと言うのに。

 まだ日が浅いからかもしれないが……実に情け無い姿を珀瑛ハクエイ様の前で晒してしまった。無理はないと、おっしゃってくださったが。


(……あの王は、王妃は……王太子も……すべて、だろうか)


 神は……私があの者らの望みで召喚した財宝を他国に流していたとおっしゃっていた。それが……本来はガラクタゴミだからと元の姿となり、怒ってモーディアスに攻め入ったとあったが。

 たしかに……財宝だと思っていたものが、ガラクタであれば誰だって怒って当然。それが……あの王以上の我欲の持ち主であれば。


(…………惨殺されたかもしれないわ)


 聖女を痛めつけていたことへの罪を負わされたとも……龍羽リュウハ様からお聞きした。なら、防衛する時間も与えられなかったはず。

 ただ……死を待つ時間しか与えられなかっただろう。


「……ミラ。もう涙止まったか?」


 ハク様は、私が泣き止むまで……ずっと抱きしめながら背をさすってくださった。そのお気遣いがとても嬉しく……しかし、あの者らが死んだ事実を知ると……素直に喜んで良いのか悩んだ。

 大精霊になったからとは言え……彼らを憐れむ気持ちがあるのに……どうしても、ほっとしてしまう気持ちもあった。そのような……浅ましい気持ちが自分の中にあっていいのかと、驚きを隠せない。


「……はい。大丈夫です」

「ほんま? 無理しとらん?」

「……正直、まだわからないんです。自分に芽生えた感情が」

「……悲しいだけやないんやろ?」

「……お分かりですか?」

「そりゃ。愛しとる相手のことやで? まだ出会った期間短くても……なんとなくはわかる」

「……実は」


 ぽつ……ぽつ、と……自分に芽生えた感情を素直に伝えると、ハク様は……また私を抱きしめてくださった。


「普通や。俺ら大精霊だって芽生える感情やで? ミラだけちゃう。俺としては……もうミラを傷つけん奴がいなくなってせいせいしとるけど」

「……同じように、思ってしまいました」

「ええんよ。ミラはなんも悪くない」


 なっ? と顔を覗き込まれた時は……寂しそうな笑顔を向けてくださったが。

 すぐに、軽い口付けをされ……それだけで、痛んでいた胸の奥が温かくなるのを感じた。

 終わった事は出来てしまったが。

 今は……この方と共にいることを選んだのだ。

 だから……それでいいとハク様にも伝えられた気がして、私もなんとか微笑むことが出来た。
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