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第77話 誰でもある

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 少しずつ、好きになってきたお風呂でゆっくりとしていただけなのに……どうやら、『のぼせる』と言う行為で珀瑛ハクエイ様にご迷惑をおかけしてしまった。

 まだまだ人間だった名残りがあるとは言え……なんて、無様な有様を見せてしまったのだろう。

 気にするな……とおっしゃっていただけたが、私の心は軽くだが沈むばかり。

 せっかく……これから、ポフム殿方がご用意してくださった美味しいご夕食を食べることが出来ると言うのに。


【気にしない、のが無理?】


 廊下を歩いている途中で、風珀フウハク様に尋ねられてしまう程だった。


「……はい。情けなくて」

【誰とて、失敗はつきもの。ミラは……嫌いだった、お風呂を克服したんだ。それだけでも凄い】

「……凄い、でしょうか?」


 たしかに……あの城にいた時は、絶対嫌だと思っていた行為なのに。

 こちらで過ごして……まだ二日か三日程度なのに、今では『好き』だ。風珀様が、優しく使い方を教えてくださったこともあるけれど。


「せや。苦手を克服することは偉いで~? そう言う子には、ちゃーんとご褒美用意せなな?」

【主は甘やかすのが上手】

「はは、そうか」


 あの城にいた頃は……ガラクタなどを召喚した場合、打たれたり色々と殴られたりもした。

 そのあとは、縛られて身動きを取れずに……治癒の魔法すら、誰にもかけてもらえない。

 けれど……こちらは全く違う。

 ゴミやガラクタを糧にされることなので、私の召喚したものに役立つことが出来た。

 まだ実感が湧かないが……大精霊にもなれたのだ。

 空を飛んだ以外、何も試せていないが……もっと、もっと皆様のお役に立ちたい。

 そう思うと……沈んでいた気持ちが、少しずつよくなってきた。たしかに、珀瑛様方にご迷惑をおかけしたが……失敗を恐れない気持ちが芽生えてきたのだ。


「……ありがとうございます」


 だから……謝罪ではなく、感謝の言葉を伝えたのだ。


「ええ返事や。今日は軽い宴のつもりで、ぎょーさんご飯食おうや」

「はい!」


 今日のお夕飯は何なのだろう。

 あのシチューや……ふわふわの白パンもあるのだろうか?

 何が出てくるか、とても楽しみになってきた。

 歩いている途中、うっかり少しだけ飛んでしまったが……珀瑛様方は注意することもなく、ただただ微笑んでくださったのだった。
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