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第50話 珀瑛の焦り

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 ミラがいきなり倒れた。

 俺は慌てて受け止めたが、服の上からでもわかる熱さに驚きを隠せなかった。


「ミラ……ミラ!!」


 体を揺さぶっても、ミラはちっとも起きなかった。

 目をつむっていても、辛そうな表情に何が起きたのか俺にはわからなかった。どうすれば……と思っていると、頭を誰かに殴られた。


「落ち着きなって!! 馬鹿虎」


 緑斗リョクトやった。

 俺を叱るだけでなく、殴るまでしてきたが……パニックになっとった俺を多少なりとも落ち着かせてくれた。顔を上げれば、凰華オウカらもため息を吐いていた。


「慌てるでない。ミラが同胞になるのを受け入れたのじゃから……肉体が変化しておるのじゃろう?」


 のお、龍羽リュウハ様? と、凰華が龍羽様に聞けば……龍羽様はニコニコの笑顔のまま頷かれた。


「そうだよ? ミラは僕らと同じになるのを受け入れた。僕らの魔力を取り込んで……一日程度だったけど、順調に作り変わっているようだから、少しすれば起きるよ」


 しかし、このままでは寝苦しいだろうからと、龍羽様が魔法で花のベッドをこしらえ……その上でミラを寝かせてやった。

 まだ表情は辛そうやったから、俺は布を召喚させてスイに癒しの水を布に含ませてもろて……ミラのおでこに絞ったそれを載せてやった。


「ミラ……」


 俺らの愛しい子。

 俺の愛しい子。

 頼む……今まで苦しんでいた子に、これ以上苦しみを味わってほしくない。

 けど……人間のままやと、俺らと一緒にいられないかもしれへん。

 それを、この小さな女の子は受け入れてくてたんや。

 たまらず、小さな手をぎゅっと握ってやれば……ただでさえ華奢な手が冷たく感じた。


「…………ハク。ミラ、好き?」


 翠雨スイウが何気なく聞いてきた言葉に……俺は強く頷いた。


「……ああ」


 ここまで、自分で動揺する気持ちがあると言うことは……本当の気持ちだ。

 ミラはどう思っているかはわからないにしても……俺は、ミラが好きや。

 起きたら、すぐに伝えたいくらい。

 精獣体の姿で、もふもふもさせてやりたい。簡易体でもええ。

 ミラの喜ぶことをさせてやりたい。

 今が辛抱せなあかんのは、よくわかっても……出来るだけ早く目を開けてほしい。

 だから……と俺は、強くミラの手を両手で包み込んでやった。


「え? マジ? 昨日の今日で?」

「ほっほ。ミラが殊更気に入っておるようじゃから、脈がないわけではなさそうじゃが」

「ほんとだねー? ミラはどうなんだろ?」


 切羽詰まっておるはずやのに、なんで外野はのほほんとしとるねん!?
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