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第38話 むぎゅっと

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『広がれ広がれ……世界に!』


 龍羽リュウハ様が空に手を上げ、決して大声ではないが……透き通るような、大きな声で詠唱をされた。

 御手から光があふれ……もっと空高くに、柱のように上がったかと思えば、あちこちに別れて飛んで行ってしまった。


『ひとまず、繋ぎは大丈夫そうやんな?』

「そうだね? あとは頼んだよ?」

『承知』


 そのようにやり取りをされた後……珀瑛ハクエイ様は私にまた背に乗るようにと、今度は座りやすいように姿勢を変えられた。

 まだ抵抗はあるが、本日の使命を思うと……急がなくてはいけない。なので、恐る恐る腰かけ……またしっかりと掴まった方がいいかお聞きすると、『そうやな』とお返事された。


「いってらっしゃい~~!!」


 龍羽様に見送られながら、次の向かう場所へと珀瑛様がまた空を駆けていく。

 速さにはまだ慣れないが……『ヒュー』っと言う音が聞こえて、そちらを振り向けば……龍羽様が放ったあの白い光がすぐ近くまで飛んでいたのだ。


『あの光の先に向かうでー!』


 珀瑛様がそうおっしゃると……光に合わせるかのように、どんどん進む速さが増していく。しっかりと、落ちないように珀瑛様の首にしがみつくと……簡易体と言う、あのもふもふした姿とは違うのに……ふかっとした毛の感触がわかるくらい、気持ち的に余裕が出てきた。


(……ふかふか!)


 なんて素敵な手触りなのだろう……!

 艶やかで、けど、ふかふかしていて……少し、手で触ると……お借りしているお部屋にあった、ふかふかの絨毯と言うのとよく似ていて。

 風珀フウハク様には少し苦笑いされたくらい、あれには何度も触ってしまった。それと同じ……いや、それ以上のものがここに!!


『あ~……ミラ?』


 あと少しで、地面に着くと言うところで……珀瑛様からのテレパシーが届いた。


「あ、はい?」

『そんなわしゃわしゃされると……こそばいんやけど』

「ふ、不快でしたか!?」

『い、いや!? 大丈夫やけど……ちょぉ、むずがゆい言うんか。ま、そろそろ着くから、堪忍な?』

「……はい」


 想いを寄せている方に、私は何を……!!

 けれど、叱られたわけではないようだ。それには少しだけ、ほっと出来た。

 そこからは撫でるのをやめて、しっかり掴まっていると……すとっと、珀瑛様が地面に降りられた。


『お? ちょうどええ頃合いやんな?』


 と、おっしゃった時に……あの光が、何かを包んで強く光っていたのだった。


『……ふわぁ~。いい気持ち~~!!』


 岩場のような場所から……珀瑛様達の言う、簡易体らしいもこもこした精霊が出て来られた。

 鳥の羽がふさふさしていて……そのふわふわに、私はまた、触りたい欲望が出てしまいそうになった!
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