26 / 147
第26話 クッキー作りに嫌な記憶
しおりを挟む「料理したことないんやったら、簡単やけど綺麗なもん作らへん?」
「綺麗な?」
「クッキーはクッキーや。けんど、仕上がりがキラキラしとんねん。飴を使うんよ?」
「……あめ?」
「……そこもか。ちょぉ、待ち」
説明の途中で、珀瑛様が奥に行かれてすぐに戻ってこられると……宝石のような緑色の玉を私の手に握らせた。
「……これは?」
「宝石ちゃうで? 甘い食いもんや。口の中に入れて、転がしてみ?」
「……はい」
宝石のように美しいが……食べ物らしいそれを口に含んでみた。
蕩けるような甘さで、噛めないがころころと口の中で転がすと……どんどん口の中に甘みが広がっていくのだ。
終わりがみえない……と思ったが、飴はどんどん小さくなっていく。
「美味いやろ? これとクッキーを合わせて作るんや。ステンドグラスクッキー言うんよ」
「ステンドグラス……礼拝堂などにあるような?」
「一応聖女やったから、そう言う場所は教えてもろたんか?」
「はい。そこで召喚していたので」
「あのうんまいゴミ……そういや、俺らには飴みたいな感じやなあ? ……また明日とかに、出してくれへん? 龍羽様の快癒で循環が始まっとるやろうけど、食わせてやりたい精霊らがおんねん」
「! お任せください」
珀瑛様方のお役に立てるのであれば……嬉しくないわけがない!
とは言え、今日は無茶をしてはいけないからと、クッキー作りの続きをすることに。クッキーの生地……と言うのは既にあるらしく、そこに型というので生地を抜いていくのが楽しかった。
このまま食べれるのかと思った時は、珀瑛様方を盛大に驚かせてしまったけれど……。
【びっくりした。本当に……知らない?】
「……申し訳ありません」
「ま。これからいっぱい教えたる! こっちの生地は先に焼いとこ。ミラに次してほしいのはコレなんや」
と、珀瑛様に渡されたのは……麻の袋と同じ色の飴。
あと、何かの太い棒。
珀瑛様が袋に飴を入れて……棒で叩いたのだ。
「……あの。そのように?」
「こんままじゃ、窯ん中ですぐに溶けへんからなあ? ……って、ミラ? どしたん??」
「……その」
ある日から……ガラクタなどしか召喚出来くなった頃に。
つい先日もだが……王妃と呼ばれていた女性から、叩かれていたことを……思い出してしまった。
『お前なんか、役立たずだ!! あのようなガラクタと同じだ!!』
と言われたのも思い出してしまい……堪らず、頭を抱えると……温かなものに体が包み込まれた。
「……すまん。やな事思い出させて」
頭も撫でていただけくと……私は単純なのか、あの頃の仕打ちが……少しずつ薄らぎ、珀瑛様の温もりで頭がいっぱいになった。
(……ああ、やはり)
私は、この方をお慕いしているんだなと……はっきり自覚出来た。
1
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか
まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。
しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。
〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。
その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。
人間不信の異世界転移者
遊暮
ファンタジー
「俺には……友情も愛情も信じられないんだよ」
両親を殺害した少年は翌日、クラスメイト達と共に異世界へ召喚される。
一人抜け出した少年は、どこか壊れた少女達を仲間に加えながら世界を巡っていく。
異世界で一人の狂人は何を求め、何を成すのか。
それはたとえ、神であろうと分からない――
*感想、アドバイス等大歓迎!
*12/26 プロローグを改稿しました
基本一人称
文字数一話あたり約2000~5000文字
ステータス、スキル制
現在は不定期更新です
転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~
志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。
自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。
しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。
身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。
しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた!
第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。
側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。
厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。
後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる