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第26話 クッキー作りに嫌な記憶

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「料理したことないんやったら、簡単やけど綺麗なもん作らへん?」

「綺麗な?」

「クッキーはクッキーや。けんど、仕上がりがキラキラしとんねん。飴を使うんよ?」

「……あめ?」

「……そこもか。ちょぉ、待ち」


 説明の途中で、珀瑛ハクエイ様が奥に行かれてすぐに戻ってこられると……宝石のような緑色の玉を私の手に握らせた。


「……これは?」

「宝石ちゃうで? 甘い食いもんや。口の中に入れて、転がしてみ?」

「……はい」


 宝石のように美しいが……食べ物らしいそれを口に含んでみた。

 蕩けるような甘さで、噛めないがころころと口の中で転がすと……どんどん口の中に甘みが広がっていくのだ。

 終わりがみえない……と思ったが、飴はどんどん小さくなっていく。


「美味いやろ? これとクッキーを合わせて作るんや。ステンドグラスクッキー言うんよ」

「ステンドグラス……礼拝堂などにあるような?」

「一応聖女やったから、そう言う場所は教えてもろたんか?」

「はい。そこで召喚していたので」

「あのうんまいゴミ……そういや、俺らには飴みたいな感じやなあ? ……また明日とかに、出してくれへん? 龍羽リュウハ様の快癒で循環が始まっとるやろうけど、食わせてやりたい精霊らがおんねん」

「! お任せください」


 珀瑛様方のお役に立てるのであれば……嬉しくないわけがない!

 とは言え、今日は無茶をしてはいけないからと、クッキー作りの続きをすることに。クッキーの生地……と言うのは既にあるらしく、そこに型というので生地を抜いていくのが楽しかった。

 このまま食べれるのかと思った時は、珀瑛様方を盛大に驚かせてしまったけれど……。


【びっくりした。本当に……知らない?】

「……申し訳ありません」

「ま。これからいっぱい教えたる! こっちの生地は先に焼いとこ。ミラに次してほしいのはコレなんや」


 と、珀瑛様に渡されたのは……麻の袋と同じ色の飴。

 あと、何かの太い棒。

 珀瑛様が袋に飴を入れて……棒で叩いたのだ。


「……あの。そのように?」

「こんままじゃ、窯ん中ですぐに溶けへんからなあ? ……って、ミラ? どしたん??」

「……その」


 ある日から……ガラクタなどしか召喚出来くなった頃に。

 つい先日もだが……王妃と呼ばれていた女性から、叩かれていたことを……思い出してしまった。


『お前なんか、役立たずだ!! あのようなガラクタと同じだ!!』


 と言われたのも思い出してしまい……堪らず、頭を抱えると……温かなものに体が包み込まれた。


「……すまん。やな事思い出させて」


 頭も撫でていただけくと……私は単純なのか、あの頃の仕打ちが……少しずつ薄らぎ、珀瑛様の温もりで頭がいっぱいになった。


(……ああ、やはり)


 私は、この方をお慕いしているんだなと……はっきり自覚出来た。
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