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如何に婚姻まで(番外編)
第39話 旅路の先にて、憐れに
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彼奴の九十九からの言伝が、式神を介して届いた。彼方の地を徘徊していた玉蘭であったが、もしもの事を懸念しての事態が……どうやら起きてしまったらしい。
腹違いだが、弟であったあの男は過ちの道筋にて終焉を迎えてしまった。彼の九十九に頼んでいた提案は、どうやら実行されたようだ。あってほしくないことだが、あの家のことよりも、孫の恋花の未来を大切にしたい気持ちはもちろんあったが。
「……姉として。せめて、これくらいしか情けをかけられんかったが。ほんと、阿呆なことをしやがって」
野心を抱いた輩が、当主候補となった時点で身を引いたものの。縁戚が皇室とくれば、恋花が紅狼の室になることと、宮中を救済した事実を知られてしまえば。あの愚か者は、逆手にそれを利用して……皇室を乗っとるくらいは予想がついていた。
だから、いつかの保険としてあれの九十九に言伝はしておいたのだが。玉蘭に異能があった時点で先視通りになるとは……外れたことは稀にあっても、こればかりは無理だったようだ。
正室の子ではないことを妬んでいた義弟は、特に玉蘭を憎むように育てられていた。その義姉が当主候補から辞退したことで、大層喜んでいたようだが。先読みは移籍することなく玉蘭に宿りつつげ、継承者は少し先に生まれることになった孫となれば。
ただ『当主』であるだけの存在。本人が一番理解しているだろうからと、玉蘭は本家を出たのだ。亡くなった夫との生き方も把握していたが、恋花が継承者であることを無視出来ないし……義弟に告げるつもりはなかった。
あの襲撃事件が無ければ、違う道筋もあっただろうが。玉蘭は生き方を知り過ぎていた。この旅路に出る手前までは。
「異能なんかに左右されてたのは、やっぱりあんたもだったのかい」
家格に固執するように養育されたせいで、己の生き方を見出せなかった。それがどれほど憐れなことでしかないのか。九十九への言伝が実行されたのならば、何も見出せなかったのだろう。
死を目前にしても、固執した概念の中で生きていくしかないと。なんと、惨めな人生で終わってしまうのだろう。現皇帝がこちらの従兄弟を正式な当主にするのと、養護者として恋花を護ってくれるのも把握はしてくれていたが。
出来れば、道筋が整えば義弟へと望みを抱いていた時期はあっても叶わなかった。
異能に一番左右されていたのは玉蘭自身なのに。『生きている異能』である先読みはどこまでも宿主の心様に応えるのか。
恋花に一番適合して、あの子が望む道筋を照らしてくれているとなれば。手段は正当でも、孫をひとりにして継承の儀を行った良かった。
しばらく、弱い心にさせても支えてくれる最愛の存在に包まれたのなら……玉蘭は、先の知らない旅路をこのまま続けていこう。おそらく、斗亜はふたりの婚姻の儀くらいは戻って来いというだろうが。
「……資格なんてないさ。あたしは、最低の生き方をあの子に与えた張本人なのに」
許してくれていても、玉蘭が許せていない。辿った道筋であれ、両親を喪った孫に酷い仕打ちをしたのと同じだ。参列する資格は持ち合わせていない。本人が望んだとしても、今は戻れそうにないのもある。
黄家の改革とくれば、唐亜全体が揺れ動くのだ。それに巻き込まれないためにも、今は疎遠でいた方がいい。先読みがもうないので展開は知ることはなくとも、経験上それくらい予想がつく。
「さーて、逃げるような旅路だが。久々に料理修行もいいね!」
完全に自由になった身ひとつで、これから数年以上は旅が出来るのだ。
仕えていた時期に身につけた、孫に劣るけれどそれなりに役に立つ調理を各地に伝えたり……知らないなにかを習得できるのならば。寿命が尽きるまでは、好きに過ごしたいと思っていた。
読めない道筋の旅は、まだ始まったばかり。それが、のちに各地の語り人が残したことで……先の世では、馴染みのある家庭料理になるとは本人もこのとき知らないでいるが。
自由を得た者としての、好奇心旺盛なそれは間違いなく『幸福』な始まりなのは確信していたのだ。
腹違いだが、弟であったあの男は過ちの道筋にて終焉を迎えてしまった。彼の九十九に頼んでいた提案は、どうやら実行されたようだ。あってほしくないことだが、あの家のことよりも、孫の恋花の未来を大切にしたい気持ちはもちろんあったが。
「……姉として。せめて、これくらいしか情けをかけられんかったが。ほんと、阿呆なことをしやがって」
野心を抱いた輩が、当主候補となった時点で身を引いたものの。縁戚が皇室とくれば、恋花が紅狼の室になることと、宮中を救済した事実を知られてしまえば。あの愚か者は、逆手にそれを利用して……皇室を乗っとるくらいは予想がついていた。
だから、いつかの保険としてあれの九十九に言伝はしておいたのだが。玉蘭に異能があった時点で先視通りになるとは……外れたことは稀にあっても、こればかりは無理だったようだ。
正室の子ではないことを妬んでいた義弟は、特に玉蘭を憎むように育てられていた。その義姉が当主候補から辞退したことで、大層喜んでいたようだが。先読みは移籍することなく玉蘭に宿りつつげ、継承者は少し先に生まれることになった孫となれば。
ただ『当主』であるだけの存在。本人が一番理解しているだろうからと、玉蘭は本家を出たのだ。亡くなった夫との生き方も把握していたが、恋花が継承者であることを無視出来ないし……義弟に告げるつもりはなかった。
あの襲撃事件が無ければ、違う道筋もあっただろうが。玉蘭は生き方を知り過ぎていた。この旅路に出る手前までは。
「異能なんかに左右されてたのは、やっぱりあんたもだったのかい」
家格に固執するように養育されたせいで、己の生き方を見出せなかった。それがどれほど憐れなことでしかないのか。九十九への言伝が実行されたのならば、何も見出せなかったのだろう。
死を目前にしても、固執した概念の中で生きていくしかないと。なんと、惨めな人生で終わってしまうのだろう。現皇帝がこちらの従兄弟を正式な当主にするのと、養護者として恋花を護ってくれるのも把握はしてくれていたが。
出来れば、道筋が整えば義弟へと望みを抱いていた時期はあっても叶わなかった。
異能に一番左右されていたのは玉蘭自身なのに。『生きている異能』である先読みはどこまでも宿主の心様に応えるのか。
恋花に一番適合して、あの子が望む道筋を照らしてくれているとなれば。手段は正当でも、孫をひとりにして継承の儀を行った良かった。
しばらく、弱い心にさせても支えてくれる最愛の存在に包まれたのなら……玉蘭は、先の知らない旅路をこのまま続けていこう。おそらく、斗亜はふたりの婚姻の儀くらいは戻って来いというだろうが。
「……資格なんてないさ。あたしは、最低の生き方をあの子に与えた張本人なのに」
許してくれていても、玉蘭が許せていない。辿った道筋であれ、両親を喪った孫に酷い仕打ちをしたのと同じだ。参列する資格は持ち合わせていない。本人が望んだとしても、今は戻れそうにないのもある。
黄家の改革とくれば、唐亜全体が揺れ動くのだ。それに巻き込まれないためにも、今は疎遠でいた方がいい。先読みがもうないので展開は知ることはなくとも、経験上それくらい予想がつく。
「さーて、逃げるような旅路だが。久々に料理修行もいいね!」
完全に自由になった身ひとつで、これから数年以上は旅が出来るのだ。
仕えていた時期に身につけた、孫に劣るけれどそれなりに役に立つ調理を各地に伝えたり……知らないなにかを習得できるのならば。寿命が尽きるまでは、好きに過ごしたいと思っていた。
読めない道筋の旅は、まだ始まったばかり。それが、のちに各地の語り人が残したことで……先の世では、馴染みのある家庭料理になるとは本人もこのとき知らないでいるが。
自由を得た者としての、好奇心旺盛なそれは間違いなく『幸福』な始まりなのは確信していたのだ。
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