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第24話 皇妃候補②
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その輝かしい笑顔は、まるで恋花と同じような年頃の少女のみたいに愛らしい。ころころと表情が変わる女性を見るのはいつ以来だろうか。
自分が感情の乏しい人間だとわかっているが、緑玲妃のそれを見ても不快には感じなかった。むしろ、あの皇帝の隣に立つのはこの女性が一番相応しいと納得してしまうくらいに。
それゆえか、恋花の心のしこりが少しほぐれたのだろうか。もう一度、最敬礼をしてから梁に少し前へと出てもらった。
「……はい。私とこちらの九十九と共に、作らせていただきました」
「とても良い香りだわ。主上がわたくしへと?」
「……はい」
少し緊張で声がかすれてしまうが、緑玲妃は大して気にしていないようだった。恋花が頷くと、中にいた別の侍女か女官に茶の準備をするように進めたのには、崔廉が待つように声をかけた。
「この麺麭はかなり甘いのさ。渋めの方が合うかもしれないよ」
「まあ、そうなの? 点心局長が言うのなら間違いないわ」
疑うこともなく、すぐに指示を出していた。少しばかりは疑っても良いのに……そこは皇帝の言葉もだが、崔廉の言葉を信頼しているからだろう。そのように恋花を信頼どころか信用もされていないのに、随分と素直な性格をしている。しかし、恋花は緑玲妃を嫌な存在だとは思わない。
初めて顔を見た時の、あのふんわりとした柔らかい空気の虜にされてしまったからだろう。
そして、準備が整ったら卓の上にくりぃむ麺麭の器を置く。まあるい形が可愛らしく、とても中に餡が入っているようには見えない。
「緑玲妃様。こちらの料理は、中に小豆ではない滑らかな餡が入っております」
先に毒味をした鈴那がそう告げると、緑玲妃は益々表情を輝くものとした。
「まあ、そうなの? とても楽しみだわ」
「……まだ温かいので、ちぎるよりかじりついてください」
「うふふ。主上の前だと恥ずかしいけれど、勧めてくれるのならそうするわ」
否定されるかと思っていたのに、受け入れてくれた。やはり、この女性はとても優しい存在だ。恋花が『無し』であった時ならどう扱っていたか……考えていても、今は梁が居てくれるので言わないでおく。
それよりも、本当に麺麭を手に取って小さな口でかじってくれていたのだ。
綺麗に化粧された顔と唇に、茶色く香ばしく焼かれた麺麭が近づいていく。
ほんの少し、唇が触れて奥の歯が麺麭の表面をかじった。
むぐむぐと動く口が、食べたものを喉に通して飲み込んでいく……それだけの所作なのに、まるで絵になるようだ。
そして、緑玲妃はひと口食べた後に、またあの輝かしい笑顔を見せてくれたのだ。
「……いかがでしょう?」
恋花が念のために聞くと、緑玲妃は首を大きく縦に振った。
「香ばしいわ!! 包子もふんわりしてるけど、わたくしはこちらの方が好みね!!」
そう言って、もう一口食べた時にはくりぃむにたどりついたのか、さらに少女のような笑顔になった。その反応に、恋花は心に安心した気持ちが広がっていく。皇帝にもだが、皇妃候補にも喜ばれる出来となったのが嬉しかったのだ。
自分が感情の乏しい人間だとわかっているが、緑玲妃のそれを見ても不快には感じなかった。むしろ、あの皇帝の隣に立つのはこの女性が一番相応しいと納得してしまうくらいに。
それゆえか、恋花の心のしこりが少しほぐれたのだろうか。もう一度、最敬礼をしてから梁に少し前へと出てもらった。
「……はい。私とこちらの九十九と共に、作らせていただきました」
「とても良い香りだわ。主上がわたくしへと?」
「……はい」
少し緊張で声がかすれてしまうが、緑玲妃は大して気にしていないようだった。恋花が頷くと、中にいた別の侍女か女官に茶の準備をするように進めたのには、崔廉が待つように声をかけた。
「この麺麭はかなり甘いのさ。渋めの方が合うかもしれないよ」
「まあ、そうなの? 点心局長が言うのなら間違いないわ」
疑うこともなく、すぐに指示を出していた。少しばかりは疑っても良いのに……そこは皇帝の言葉もだが、崔廉の言葉を信頼しているからだろう。そのように恋花を信頼どころか信用もされていないのに、随分と素直な性格をしている。しかし、恋花は緑玲妃を嫌な存在だとは思わない。
初めて顔を見た時の、あのふんわりとした柔らかい空気の虜にされてしまったからだろう。
そして、準備が整ったら卓の上にくりぃむ麺麭の器を置く。まあるい形が可愛らしく、とても中に餡が入っているようには見えない。
「緑玲妃様。こちらの料理は、中に小豆ではない滑らかな餡が入っております」
先に毒味をした鈴那がそう告げると、緑玲妃は益々表情を輝くものとした。
「まあ、そうなの? とても楽しみだわ」
「……まだ温かいので、ちぎるよりかじりついてください」
「うふふ。主上の前だと恥ずかしいけれど、勧めてくれるのならそうするわ」
否定されるかと思っていたのに、受け入れてくれた。やはり、この女性はとても優しい存在だ。恋花が『無し』であった時ならどう扱っていたか……考えていても、今は梁が居てくれるので言わないでおく。
それよりも、本当に麺麭を手に取って小さな口でかじってくれていたのだ。
綺麗に化粧された顔と唇に、茶色く香ばしく焼かれた麺麭が近づいていく。
ほんの少し、唇が触れて奥の歯が麺麭の表面をかじった。
むぐむぐと動く口が、食べたものを喉に通して飲み込んでいく……それだけの所作なのに、まるで絵になるようだ。
そして、緑玲妃はひと口食べた後に、またあの輝かしい笑顔を見せてくれたのだ。
「……いかがでしょう?」
恋花が念のために聞くと、緑玲妃は首を大きく縦に振った。
「香ばしいわ!! 包子もふんわりしてるけど、わたくしはこちらの方が好みね!!」
そう言って、もう一口食べた時にはくりぃむにたどりついたのか、さらに少女のような笑顔になった。その反応に、恋花は心に安心した気持ちが広がっていく。皇帝にもだが、皇妃候補にも喜ばれる出来となったのが嬉しかったのだ。
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