上 下
90 / 100
第十八章 出戻り④

第5話 気がついたら……

しおりを挟む
 そこからの記憶がない。

 誰かに、顔を軽く叩かれているので……意識が浮かんでいく感じがした。

 誰だろう……いい気持ちで眠っていたのに。


「……ディス!! トラディス!!?」

「ふぇ!?」


 ジェフさんの声が、耳元でめちゃくちゃ大きく聞こえたので、僕もめちゃくちゃ驚いて慌てて起き上がった。

 すると、僕の向かい側ではマシュさんが滝のような涙を流していて……レイザーさんは思いっきりため息を吐いていた。


「うぅ……うぅ! トラディスさぁん!!」

「ったく、気ぃ失ってただけか……。めちゃくちゃ心配させやがって!」

「まったくだ!」


 ジェフさんが最後に、頭をこつんと軽く叩いたので……僕は自分に起きた状況を少しずつ思い出してきた。

 様子見するために降りてきた階層で、モンスターの吠え声で上に戻れなくなって……戦って、フランツを使ってレーザーソードを……そこで意識が途切れた。

 モンスターは!? と振り返れば……僕のすぐ後ろの壁が、あのモンスターの影の形に黒く染まってて……しゅうしゅうと音を立てていた。

 ってことは……。


「これ……僕……(とフランツ)が??」

「はいですの」

「「おう」」


 フランツが最大とか言っていたけど……マシュさんのあの魔法以上じゃないだろうか??

 フランツにテレパシーを一応送ると。


【ちょぉ、魔力回復んために寝かして。剣の切れ味とかは普通に使えるから】


 と言って、それから返事も相づちもなかった。よっぽど疲れたみたい。


「……ご心配おかけしました」


 とりあえず、仕方がなかったとは言えジェフさん達に無断でモンスターを倒したのだ。

 きちんと謝ると……何故か三人から頭をなでなでされたんだけど。


「無事なら良い。んで? 俺らは地面がいきなり砕けたんで来れたが……お前さんの魔剣の威力は、色々セーブさせた方がいいな??」


 ジェフさんがそう言うのでやっと気づいたけど……僕らの周りは岩だらけだった。


「これ……も??」

「あぁ……トラディスの魔剣の威力だろうよ」


 レイザーさんは、普通の魔剣にしか見えないフランツをじーっと見ていたけど……多分、パンの刀身に見えていないよね??

 マシュさんも触らないでいてくれてるけど……同じように見ていた。


「ご立派な魔剣ですの」

「主人の危険を察知して……上が割れたら結界も張ってたようだしな?」

「そうなんですか……?」

「…………フランツならしてくれるだろうよ」


 こっそり、ジェフさんが僕に教えてくれると……僕は嬉しくなったが、フランツの名前は呼べないので笑っておくだけにした。

 ちなみに、その結界は皆さんがこの階層に着地した時に……僕の周りに張られているのをジェフさんが目撃して、ゆっくり消えていったんだそうだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

純製造型錬金術師と黄金の鷹

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:19

異世界でDP稼いでたら女神って呼ばれちゃった

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:3,152

後宮ダンジョン

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:14

逃げ遅れた令嬢は最強の使徒でした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:184pt お気に入り:2,777

神の樹の物語・第一部 (巨大な樹が空を覆う世界に生きる人々)

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:4

異世界生活研修所~その後の世界で暮らす事になりました~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:106

処理中です...