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第十四章 野営料理じゃない

第1話 チャーシュー調理

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 温泉地で起きた、モンスター襲撃についてはもう大丈夫だと支配人さん達からの報告があったため……僕とジェフさんスククルトを出ることにした。

 リクシアの街に戻るのは急いでいるわけでもないので、のんびり向かう途中でフランツから『ヤキブタ』を作ってみようと提案があったから……川辺で作ることになった。


「襲撃とかは無さそうだが……魔結晶で結界張るか?」


 ジェフさんが見回りとかに回ってくれると言ったので、僕とフランツは調理に集中出来る。

 フランツが思念体でざっくり下処理をしてくれた……豚肉じゃなくて、魔猪だけど。そのお肉にリクシアで買い溜めて置いたニンニクとジンジャーを擦り込む。


【これを……調味液に漬け込んで、時間あれば一日以上冷暗所に置くんやけど】


 時間が限られているので、フランツがなんと時間を操作する魔法を扱えるからと……お肉を漬け込む時間を操作した。した、っと言っても一瞬光っただけでよくわからない。

 フランツ自身も、まだ時間を進めさせるしか出来ないみたい。僕の装備者としてのレベルが上がれば、フランツの出来ることも増えるんだって。

 今はまだまだランクD以下らしい。


「次はどうするの??」

【調味液から肉出して、焼くんや。弱い火でじっくり蒸し焼き……表面はしっかり焼くんよ】

「……生焼けにならない??」

【一時間焼くから、大丈夫や】

「いっ!?」


 ちょっとお腹ぺこぺこになっているのに!?


「マジかよ? それまでお預けか??」


 ジェフさんも戻ってきたけど……何故か野うさぎを狩ったみたい。襲いかかってきたから、狩っただけなんだってさ? とりあえず、ヤキブタを焼いている間に野うさぎで香草焼きにすることにした。

 お塩とハーブを短時間擦り込んだだけなのに、とっても美味しく出来たよ。


【マスター、時々焼く面を変えるんや】


 一箇所じゃなく、お肉の焼き目を全体に行き渡らせるためなんだって。

 すっごい焦げているんじゃなくて、香ばしくていい匂いもする焼き目。温泉地の報酬でもらった魔鉱石が早速活躍出来ているから、ほんとありがたい。強火から弱火まで出来ちゃうんだもん。


「お? 十分いい焼き加減に見えるが?」

【まだやで? 旦那が丈夫やからって、基本的に豚肉は生焼け厳禁や】

「ほーぅ?」


 コンビを組んでから、フランツはジェフさんのことを兄ちゃんとかじゃなくて『旦那』って呼ぶようになった。

 マスターは僕だけだけど、僕の冒険者としての相棒であり大先輩だから、敬意を表してそう呼ぶことにしたんだって。

 ただ、フランツはどことなくおじさんぽいところあるから……盗賊の下っ端とかに見えるのは内緒だ。


【それと、米も炊かなな?】

「「米を??」」

【今回は脂身多い部位にしたから……米とよー合うで?? 調味液にもしっかり浸かっとるから、蕩けて脂身ふわふわで】


 食事を口に出来ないのに……フランツはなんでこんなにもうまく僕らの食欲を掻き立ててしまうのだろうか?

 けど、美味しそうに聞こえちゃうから……僕とジェフさんは思わず、ツバをごくんと飲み込んだ。
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