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第十章 ダンジョンマスター
第4話 ダンジョンマスター②
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おお……おお!?
この香りじゃ!! 妾を虜にして止まない!!
トラディスが差し出してきたのは……見た目は茶色と薄茶色の混じった肉の集まりじゃった。
だが、甘辛いような芳しい香りが、胃袋のような箇所を刺激して堪らん!!
トラディスから器を受け取り……共に添えられていたスプーンを腕のひとつが持ち、その肉の山をすくってみた。内側には……魔剣は火加減を見ていた、コメと言うのか?
いくらか薄茶色に染まっていたが、香りから『食べたい』と言う欲求が湧き上がってくる!!
もう辛抱ならん!! と、妾はすくい上げたものをゆっくりと口に運んでいった。
【…………ふ、ふま!!?】
肉の部分だけでは甘辛さが強い。
じゃが、ジェフが刻んでいた野菜のシャキシャキした歯応えに甘さも堪らん!!
それ以上に……コメとやらが淡い甘さで肉達の美味さを引き立てて……何度口に入れ、歯で噛むごとに美味さが増していくのじゃ!!?
これを……人間が作った??
ダンジョンマスターである妾は知らなんだ。
冒険者達を惑わし、立ち向かわせる存在でしかなかった妾に……新たな刺激を与えてくれたのが、この幼い人間達。
マシュを返して欲しいがために、トラディスは妾に振舞ってくれたが……これは、解放だけでは足りん。
コメのひと粒残さず、スプーンで口にした後。妾は器とスプーンをトラディスに返した。
【あいわかった。見事なり】
約束通り、妾は腕のひとつの指先を使い……ゴーレムに命令して、マシュを地面に降ろした。もともと、人質であれこのためにマシュを捕まえただけじゃからのお?
トラディスは心優しい少年じゃ。きっと、戦うか提案をするかと思っていたのじゃ。
マシュは地面から降りると……何故か妾のところに来て、あちこちを見てきたが。
「魔導具ではないですの!! コアによる擬似生命体だと思いますの!!」
【……間違っておらんが】
ほんに……本当に、自分のことより魔導具関連を好んでいるんじゃな……。
いささか呆れたが、まあ良いか。
「んで? あんたが嬢ちゃん返してくれたっつーことは……このダンジョンはクリアってことか??」
ジェフが冒険者らしいことを聞いてきおった。トラディスらも忘れていたのか、『あ!?』と声を上げたわい。
【そうさな? 本来の意味でのクリアではないが……妾を満足させたのじゃ、合格と言って良い】
「本来は……あんたを倒すのか??」
【そうじゃ。が、トラディスがそれを良しとせんじゃろう?】
実際に見てみれば、トラディスは思いっきり首を縦に振りおった。
「……わかった。なら、俺もとやかく言わない」
納得したのか、ジェフは構えていた聖槍を背に戻したわい。
【……未知なる馳走を妾の口にさせてもらった者達よ。証拠として、コアの欠片をトラディスに渡そう。地上へは特別に送ろうぞ?】
腕のひとつに、欠片を紋章にしたものを作らせ。
腕のひとつで、此奴らに転送の魔法をかけて。
ひとりになることに変わりないが……別れを彼らとすることになった。
この香りじゃ!! 妾を虜にして止まない!!
トラディスが差し出してきたのは……見た目は茶色と薄茶色の混じった肉の集まりじゃった。
だが、甘辛いような芳しい香りが、胃袋のような箇所を刺激して堪らん!!
トラディスから器を受け取り……共に添えられていたスプーンを腕のひとつが持ち、その肉の山をすくってみた。内側には……魔剣は火加減を見ていた、コメと言うのか?
いくらか薄茶色に染まっていたが、香りから『食べたい』と言う欲求が湧き上がってくる!!
もう辛抱ならん!! と、妾はすくい上げたものをゆっくりと口に運んでいった。
【…………ふ、ふま!!?】
肉の部分だけでは甘辛さが強い。
じゃが、ジェフが刻んでいた野菜のシャキシャキした歯応えに甘さも堪らん!!
それ以上に……コメとやらが淡い甘さで肉達の美味さを引き立てて……何度口に入れ、歯で噛むごとに美味さが増していくのじゃ!!?
これを……人間が作った??
ダンジョンマスターである妾は知らなんだ。
冒険者達を惑わし、立ち向かわせる存在でしかなかった妾に……新たな刺激を与えてくれたのが、この幼い人間達。
マシュを返して欲しいがために、トラディスは妾に振舞ってくれたが……これは、解放だけでは足りん。
コメのひと粒残さず、スプーンで口にした後。妾は器とスプーンをトラディスに返した。
【あいわかった。見事なり】
約束通り、妾は腕のひとつの指先を使い……ゴーレムに命令して、マシュを地面に降ろした。もともと、人質であれこのためにマシュを捕まえただけじゃからのお?
トラディスは心優しい少年じゃ。きっと、戦うか提案をするかと思っていたのじゃ。
マシュは地面から降りると……何故か妾のところに来て、あちこちを見てきたが。
「魔導具ではないですの!! コアによる擬似生命体だと思いますの!!」
【……間違っておらんが】
ほんに……本当に、自分のことより魔導具関連を好んでいるんじゃな……。
いささか呆れたが、まあ良いか。
「んで? あんたが嬢ちゃん返してくれたっつーことは……このダンジョンはクリアってことか??」
ジェフが冒険者らしいことを聞いてきおった。トラディスらも忘れていたのか、『あ!?』と声を上げたわい。
【そうさな? 本来の意味でのクリアではないが……妾を満足させたのじゃ、合格と言って良い】
「本来は……あんたを倒すのか??」
【そうじゃ。が、トラディスがそれを良しとせんじゃろう?】
実際に見てみれば、トラディスは思いっきり首を縦に振りおった。
「……わかった。なら、俺もとやかく言わない」
納得したのか、ジェフは構えていた聖槍を背に戻したわい。
【……未知なる馳走を妾の口にさせてもらった者達よ。証拠として、コアの欠片をトラディスに渡そう。地上へは特別に送ろうぞ?】
腕のひとつに、欠片を紋章にしたものを作らせ。
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ひとりになることに変わりないが……別れを彼らとすることになった。
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