最強の剣がフランスパン!?〜最弱冒険者の無双冒険録〜

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
45 / 100
第九章 不可思議な罠達④

第5話 管理者の傍観③

しおりを挟む


(ほほう……菓子、か??)


 守護ゴーレムを、マシュがいささか物騒な耳長族由来の魔法で倒した直後。

 妾は何も手を貸してはおらぬが、魔素が衝突し合い……ゴーレムの身体をベースとして雪砂糖スノーシュガーの結晶が生じたのじゃ。

 ジェフは見るのが初めてではなかったゆえに、真っ先に確認してから味見をしおった。そのあとに、トラディス達にも食べさせていた。

 妾も食べたかったが……魔剣がトラディスに何か耳打ちをするのに気づき、調理するのか……かまどを作り、鍋をいくつか用意しておった。


(油も使うようじゃが……なんじゃ??)


 菓子もじゃが、ヒトの子の料理なぞ……ダンジョンマスターである妾はほとんど口にしたことがない。匂いに釣られて登ってはきたが、ダンジョンマスターゆえにあまり食事をする必要がないのじゃ。普段は魔素があれば充分。

 だが、今トラディスが作ろうとしている菓子には興味がある。

 妾はマシュの頭から降りて、トラディスの邪魔にならぬようにかまどの近くで止まった。


「ん? 気になる??」


 トラディスは、妾を邪険に扱うことはなく……一度調理の手を止めて、クダウサギと化けている妾の頭を撫でてくれた。その手つきの優しさに、この子はほんに……心根が優しい男じゃと改めて理解出来る。

 戦闘などの能力はまだまだ荒削りじゃが……悪くはない。

 経験を積めば、きっと良い冒険者となるであろう。

 トラディスは、妾を少し撫でた後に調理に戻った。念話での魔剣の指示に従い、銀色の大きな器に結晶を入れて……溶かしていた。

 そのままでも充分に美味であるのに、何を作るのじゃろう??


「えーっと……溶けたら、パンを」


 ジェフはともかく、マシュに気づかれぬよう……トラディスは魔剣が所持しておる技能スキル、亜空間収納から……パン、を取り出した。

 細長く、固そうに見えて切り込みが表面にいくつか……なんじゃ、このパン? と妾は口出ししたくなったわい。

 トラディスはそのパンを、鞄から出したギザギザの包丁のようなもので切っていき、それを……出来上がると熱していた油の鍋にどんどん入れて行ったんじゃ!!?


(パンを……揚げおった!!?)


 結晶も使うとは言え……どんな菓子になるんじゃ!!?

 まったく想像がつかぬゆえに、妾は油跳ねに気をつけながら……トラディスの後ろに周り、油鍋の中を見てみる。

 カリカリに揚がるようで……これだけでも美味そうに見えた。

 トラディスは、挟む銀の道具を使って……それらを鍋から引き上げると、網と受け皿のような銀の道具に入れていく。

 すべて引き上げてから……鍋で溶かしていた結晶の中に、なんの躊躇いもなく入れたのじゃ!!?


「こんなものかな……??」


 じゃが、揚げたパンを入れたそれは……。

 飴細工のようで、実に美味そうに見えたのじゃ!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

処理中です...