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第九章 不可思議な罠達④

第3話 食べれる結晶①

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 ゴーレムの身体が……結晶になる部分から、どんどん消えてって逆に結晶へと変化していく。

 そんな出来事を目にするのは初めてなので、何がなんだかよくわかっていない……。けど、危険じゃないのは……警戒態勢を解いたジェフさんを見ていればわかる。

 僕なんかとは比べようがないくらい、経験豊富な冒険者さんなんだから……彼の行動を見守ることにした。

 少しして、結晶が上へ向かっていく勢いが止まると……ジェフさんはなんのためらいもなくてその結晶に手を当てた。


「……ほーん」


 ぽんぽん叩くと、僕らの方に振り返ってきて……来い来いと手招きしてきたのだ。


「ジェフさん?」

「行きますですの」


 マシュさんは行きたくて堪らなかったようで、僕が先を歩いて向かうことにした。フランツとかは特に何もテレパシーがないから、本当に大丈夫みたい。

 結晶は離れて見ていたよりも、近づくとより一層綺麗で……僕は『わぁ……』としか言葉が出て来なかった。


「綺麗……」

「トラディス、触ってみろ」


 ジェフさんにそう言われたので、僕はゆっくりと結晶へと手を伸ばした。触れてみると、冷たい感触はしたけど……ちょっと表面がザラザラしているような?? 遠目に見たら、つるつるの結晶のように見えたけれど……これはいったい??


「これは……??」

「俺の推測が間違ってなきゃ……」


 ジェフさん、いきなり聖槍を別の結晶に向けて穿ち……ぼろぼろと砕けていく結晶を一個手にすると。


 ボリッ!!


 なんのためらいもなく、口に入れて食べちゃった!!?


「ええ!?」

「まあ!?」


 僕とマシュさんは、当然驚かないわけがない!!

 しかし、ジェフさんは僕らが驚いていても相変わらず口に入れた結晶をボリボリと噛み砕いている……。


「ん、美味」


 美味しいのぉおおおおお!!?


「じ、ジェフさん……それ大丈夫なんですか??」


 僕が恐る恐る聞けば、大きく頷いてくれた。


「ああ。雪砂糖スノーシュガーの結晶だ。食える食える」

「すのー?」

「しゅがー……お砂糖ですの??」

「おう。食ってみろって」


 と言って、僕らに砕けた結晶の一部を投げてきた。受け取っても……綺麗な結晶にしか見えない。本当に食べていいのか不安になるけど……あんなにも美味しそうに食べるんなら、ちょっとだけ興味はあった。


【マスター? 食ってみ?? 予想以上に美味いはずやで??】

『……ほんと??』


 飲み食い出来ないフランツには、情報としてしか知らないけれど。そのフランツが言うんだから、美味しいことには間違いない。

 なので、まずはちろっと舌を出して舐めてみた……!
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