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第六章 不可思議な罠達①
第4話『ショーガヤキドン』
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おコメが炊き上がったら……蒸らしている時間で手早く、上に載せる具材を作っていく。フランツに教わったとおり、肉ドンにするためだ。
昨日討伐して解体し、フランツの亜空間収納に入れて置いたオークの肉を惜しみなく使う。先に、『エイセイメン』と言うのを優先するのに、玉ねぎや生姜は調理していく。
「……トラディス? 全然わかんねぇぞ??」
火の番を見る必要がなくなったので、ジェフさんは僕の調理工程を不思議そうに覗いてきた。
「…………フランツ……僕の魔剣から教わったんです」
「…………あの魔剣が??」
小声で伝えると、ジェフさんも小声で返してくれた。フランツは今、かまどの側でじっとしている。マシュさんに 知性のある武器とバレないようにするためだ。魔導具大好きな彼女が、フランツの正体がわかると問い詰めだけで済まないからね?
そのマシュさんは、まだチーズパンを食べていた。お腹が空いていたけど、人前でがっつかないのはやっぱり女の人だからか?
元パーティーメンバーの女の子は違っていたけど。
「…………フランツが言うには、異世界からの産物だそうです。だから、僕らが知らない知識をたくさん知っていると」
玉ねぎを炒め、少し甘い匂いがしたら……しんなりしてきたそこに、脂身の多いオークの薄くした肉をダバっと入れて炒める。
「ほーん? 俺の相棒はちげーが……そんな 知性のある武器がいるんだなあ?」
「僕も、フランツ以外に知らないです」
「……その登録名。どう言う意味だ??」
「えーっと。ジェフさんには、フランツがどう見えています??」
「は? いかついが、魔剣だろ??」
「僕には……刃の部分がパンに見えて。所持者にはそう見えるんだそうです。フランツは、『フランスパン』って言う名前って。だったら……と」
「……………………あの剣がパン??」
やっぱり、聖槍を持っているジェフさんでもフランツの正体までは見抜けていなかったようだ。見抜いたのも、今はだんまりな聖槍さんらしいし。
とりあえず、肉も炒め終わったら……これも惜しみなく、オショーユと生姜、砂糖などを混ぜ合わせたソースを加えて。
「まあ!? とっても良い匂いですの!!」
至近距離でもだが、マシュさんのところまで匂いが届いたらしい。さっと炒めて、玉ねぎだけ味見したら……まだ数回しか作っていないが、甘辛くて良い味だったので。
ジェフさんに、木の器へおコメを軽く盛り付けてもらい、その上に僕は炒めたお肉とかを均等に載せていく。
「出来ました!! ショーガヤキドンです!!」
ダンジョンだけど、この後攻略予定の迷路の前でひと休み。
人数分のフォークとスプーンも配ったら、マシュさんは首を軽くひねった。
「これは……どう食べるんですの??」
「コメと一緒……初めてだなあ??」
おふたりは当然わからないので、僕は説明することにした。
「スプーンで、下のおコメと上の具材を一緒にして食べてみてください」
「「一緒に??」」
「おコメ単体だと、あんまり味がないので」
逆に、具材だけだと濃いから途中で飽きるだろうと言うのはフランツに教わったけど。
「「じゃあ……!!」」
匂いに我慢出来なかったのか、マシュさんは上品にスプーンを使い。ジェフさんは豪快にひと口を頬張ったのだった。
「うんめぇ!?」
「美味しいですのぉお!?」
そしてすぐに、ふたりから賞賛の言葉をもらえた。
あのパーティーにいた頃……初期はともかく、最後はそんなこともなかったから……はじめての人達にもらえて嬉しくて、涙が出そうになっちゃった。
だからか、甘辛いはずのショーガヤキドンがちょっと塩っぱく感じた。だけど、美味しかった。
昨日討伐して解体し、フランツの亜空間収納に入れて置いたオークの肉を惜しみなく使う。先に、『エイセイメン』と言うのを優先するのに、玉ねぎや生姜は調理していく。
「……トラディス? 全然わかんねぇぞ??」
火の番を見る必要がなくなったので、ジェフさんは僕の調理工程を不思議そうに覗いてきた。
「…………フランツ……僕の魔剣から教わったんです」
「…………あの魔剣が??」
小声で伝えると、ジェフさんも小声で返してくれた。フランツは今、かまどの側でじっとしている。マシュさんに 知性のある武器とバレないようにするためだ。魔導具大好きな彼女が、フランツの正体がわかると問い詰めだけで済まないからね?
そのマシュさんは、まだチーズパンを食べていた。お腹が空いていたけど、人前でがっつかないのはやっぱり女の人だからか?
元パーティーメンバーの女の子は違っていたけど。
「…………フランツが言うには、異世界からの産物だそうです。だから、僕らが知らない知識をたくさん知っていると」
玉ねぎを炒め、少し甘い匂いがしたら……しんなりしてきたそこに、脂身の多いオークの薄くした肉をダバっと入れて炒める。
「ほーん? 俺の相棒はちげーが……そんな 知性のある武器がいるんだなあ?」
「僕も、フランツ以外に知らないです」
「……その登録名。どう言う意味だ??」
「えーっと。ジェフさんには、フランツがどう見えています??」
「は? いかついが、魔剣だろ??」
「僕には……刃の部分がパンに見えて。所持者にはそう見えるんだそうです。フランツは、『フランスパン』って言う名前って。だったら……と」
「……………………あの剣がパン??」
やっぱり、聖槍を持っているジェフさんでもフランツの正体までは見抜けていなかったようだ。見抜いたのも、今はだんまりな聖槍さんらしいし。
とりあえず、肉も炒め終わったら……これも惜しみなく、オショーユと生姜、砂糖などを混ぜ合わせたソースを加えて。
「まあ!? とっても良い匂いですの!!」
至近距離でもだが、マシュさんのところまで匂いが届いたらしい。さっと炒めて、玉ねぎだけ味見したら……まだ数回しか作っていないが、甘辛くて良い味だったので。
ジェフさんに、木の器へおコメを軽く盛り付けてもらい、その上に僕は炒めたお肉とかを均等に載せていく。
「出来ました!! ショーガヤキドンです!!」
ダンジョンだけど、この後攻略予定の迷路の前でひと休み。
人数分のフォークとスプーンも配ったら、マシュさんは首を軽くひねった。
「これは……どう食べるんですの??」
「コメと一緒……初めてだなあ??」
おふたりは当然わからないので、僕は説明することにした。
「スプーンで、下のおコメと上の具材を一緒にして食べてみてください」
「「一緒に??」」
「おコメ単体だと、あんまり味がないので」
逆に、具材だけだと濃いから途中で飽きるだろうと言うのはフランツに教わったけど。
「「じゃあ……!!」」
匂いに我慢出来なかったのか、マシュさんは上品にスプーンを使い。ジェフさんは豪快にひと口を頬張ったのだった。
「うんめぇ!?」
「美味しいですのぉお!?」
そしてすぐに、ふたりから賞賛の言葉をもらえた。
あのパーティーにいた頃……初期はともかく、最後はそんなこともなかったから……はじめての人達にもらえて嬉しくて、涙が出そうになっちゃった。
だからか、甘辛いはずのショーガヤキドンがちょっと塩っぱく感じた。だけど、美味しかった。
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