上 下
12 / 100
第三章 冒険者として再スタート

第2話 戦闘試験

しおりを挟む
 フランツが言ってたことしかわかっていないけど……足が悪いのなら、戦闘訓練とか無理なのではと僕でも思う。

 僕が渋っていると、エクレアさんは小さく笑った。


「おや? 何かお気づきですか?」

「え、えーっと……」

「もしかしたら……私にハンデがあることを?」

【見抜いとるやん!?】


 フランツのテレパシーが頭に響いた後に、僕は正直に首を縦に振った。その後に、エクレアさんは苦笑いされちゃったけど。


「お気づきでしたか……余程のことがない限り、見抜かれることはありませんが。ですが、それを考慮した上での試験です。私は足が悪いですが、他は通常に動きます。魔法などは扱えますので、私からの攻撃を避けながら……足など、体を動かせざるを得ない状況にしてください。それが試験の合格条件です」

「おお!」


 なるほど、無茶のないような戦闘訓練試験と言うわけなんだね?

 ギルドマスターさんだし、きっと魔法は僕と比べられないくらい強いだろう。僕の戦闘経験はほとんどないけど、魔剣のフランツと昨日はゴロツキさん達をやっつけられた。

 最初はあんな感じがいいかもしれない。


【魔法でも出来るで?】


 僕の考えを読み取ったのか、フランツが提案してくれた。


『どれくらい? エクレアさんはすっごく強そうだけど』

【とりあえず、初級と中級やんなあ? だいたいの属性は扱えるで】

『うーん……フランツに纏わせるとかは?』

【やるか? 炎とか氷とか?】

『おー!』


 とりあえず、その会話を短時間でやり取りしてから……僕はフランツを背から下ろして、布を取り去った。

 僕には……やっぱり、剣の部分がパンに見えるけどエクレアさんには普通の魔剣に見えるから問題なし!!


「さあ、かかってきなさい!」

「お願いします!!」

【いっくで~!!】


 まず、エクレアさんは氷の魔法でニードルを空中にいくつも出現させて……僕を殺そうとはしていないけど、怪我はさせるつもりで発射させた。

 僕は、フランツから流れてくる情景を意識して、その氷達をどんどんふたつに割っては粉々にしていく。昔だったら、こう言うのも出来なかったのに……フランツの主になった僕は自分でも凄いと思えた。


「……ふむ、なるほど。次は」


 次は土魔法だった。

 フランツが飛べ! と言ってきたので、僕自慢の脚力で地面を蹴って飛び上がると……すぐに土の杭!? しかも先端がめちゃくちゃ鋭いものがたくさん出て来た!?

 串刺しにならないと思うけど、容赦ないなあ!?


(……まあ、あのパーティーにいたからだけど)


 僕自身手引きや取り引きに関わっていなくても……手を貸したことに変わりない。それを払拭出来るわけでは無いけど、今は精一杯頑張んなきゃ!!


【マスター!! 派手な水魔法教えたる!!】

『わかった!!』


 そして、フランツと同時に詠唱破棄をぶっ込んだ技名を唱えた!!



【『蒼の竜巻ブルー・トルネード』!!】


 フランツの先端から、水の竜巻が出現して土の杭にぶつかると……砂が崩れていくように全部元の地面になっちゃった!?


「今のは少し自信があったんですが……」


 次に構えを変えようとしてたので、僕はフランツにテレパシーを飛ばした。


『動くってどうしよう!?』

【やっぱ、派手にいかへん??】

『と言うと?』

【……炎】


 それに決めた! と僕はフランツに炎の魔法を纏わせてから、魔法用のステッキしか持っていないエクレアさん目掛けて急加速!!

 あっという間に間合いを詰めれたので、エクレアさんも目を丸くして……わずかに足が後ろに動いた。


「あ……」

【よっしゃ!】

「動いた!!」


 エクレアさんが苦笑いしてから、炎はすぐに消したので誰も火傷にもならなかった。

 エクレアさんは僕がぴょんぴょんと跳んでいると、上から頭を撫でてくれた。


「……負けました。これでは低ランクのGではなく、Cに昇格です」

「え?」

「私の得意魔法を見事に打ち破ったのと、その脚力ですから」


 フランツのお陰もあるとは言え、いきなり高ランクの昇格になっちゃった!?
しおりを挟む

処理中です...