最強の剣がフランスパン!?〜最弱冒険者の無双冒険録〜

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
6 / 100
第二章 フランスパンが魔剣?

第1話『特製オニオングラタンスープ』

しおりを挟む
 フランツと名付けた、僕だけの……僕だけが扱える、 知性のある武器インテリジェンス・ウェポンのフランスパンの魔剣。

 多分、彼?? のお陰で僕は生きながらえたし……これからも冒険者を続けられるようになった。彼の分身であるパンでお腹いっぱいになったんだもん。出来る事なら、恩返し?? 的なことはしてあげたい。

 とりあえず、久しぶりにお腹いっぱい食べたお陰で眠くなり……フランツが見張り番をしてくれることになって、僕は久しぶりにぐっすり寝れた。

 寝起きもスッキリ! やっぱり、ご飯って大事だ。

 だ・け・ど!


「……良い匂い!」


 起きたら起きたで、また良い匂いがした。


【おー? マスター、おはようさん】


 フランツが、何かしていた。

 火は昨夜、僕が魔除けも兼ねてそのままにしていた焚き火の前で……言うか、上??

 何か炊き出しのようなことをしていた。

 フランツには手足がない代わりに、思念体という特殊な技能スキルを使って目に見えない手足を装備しているらしい。僕には、僕の装備者としてのレベルが上がれば見えるそうだ。今はまだ2なんだって。


「おはよう、フランツ……良い匂いだけど」

【おん。朝からフランスパンは、ちょぉ、あんさんの胃袋に刺激強い思ってな? 代わりと言っちゃなんやけど、スープ作ってん】

「す、スープ?? 材料とかは??」

【安心しぃ? マスターの所持品をちょぉ、失敬した以外は森ん中の食材使ってん】

「そ……そうなんだ??」


 たしかに、昨夜フランツからは炊事担当するから持っている食材を使わせて欲しいと言われたような……。お腹いっぱいで寝ぼけてたから、適当な返事したかもだけど。

 鍋の中身を見ると、茶色のスープに何か野菜が入っていた。野草とかじゃなくて、薄く切った柔らかそうな何か。


【フランツ特製、オニオンスープや。これに、昨夜残したパンとチーズを】


 思念体の手を使い、またパンにチーズを乗せたものを火で炙る。それをくれるかなと思いきや……マグカップに入れたスープの中に沈めた!!?


「フランツ!? せっかくのパンが!!?」

【騙されたと思って食ってみぃ? 美味いで??】

「……これも、異世界の知識??」

【おん。オニオングラタンスープ言うんや】


 びっくりしたけど、こう言う料理みたい。まだ一品しか食べていないけど、フランツのご飯は美味しいから……ゆっくりと、一緒に渡されたスプーンでスープをすくう。口に入れる。

 途端、物凄い美味しい味が口いっぱいに広がっていった!!?


「……お……おいひい!!?」


 スープは少しとろっとしてて。野菜の正体は玉ねぎだった。適当に余ったものを魔法鞄マジックバックに入れてたから、腐ってなかったもんなぁ。それがシャキシャキどころか、とろっと甘くて香ばしくて……。

 夢中で飲んでたら、上のパンとチーズがスープに混ざる感じになっていた。スプーンを使うと、グチャッとなるが……スープの美味しさを吸ったパンが美味しそうに見えた。

 迷わず口に入れると……パンなのに、パンの味もスープの味も濃い!! それにチーズが加わると……トロトロ部分が高まった気がした!!


【美味いやろ? ワイのパンがちょいちょい使われる、人気の洋食なんや!】

「……よーしょく??」

【他国の料理とかいろんな意味があるんや。ワイにインプットされとる知識にはそーあんねん】

「そうなんだ?」

【材料集まったら、もっと栄養あるもの食わせたる!!】

「お願いします!!」


 ということで、僕のお腹が満足したら一緒に片付けしながら、これからの打ち合わせだ。


【まず、当面の資金やけどそれはなんとかなる】

「なんで??」

【マスターが、あのダンジョンでワイを振るったやろ? 金目のもんになるアイテムとかはこっそりワイが異空間収納で、吸収しとったんや】


 ほい、ってフランツは僕の上に空間の切れ目を作り、そこから大量のアイテムを落としてきた。


「こ、これ全部!?」

【あのアホンダラ連中に持ってかれるよか、ええやろ? マスターの装備品っぽいもんにするんなら……これとこれとかは取っといて。あとはギルドで換金してもらおうや】

「う……うん」


 売る方のアイテム達は……僕の魔法鞄マジックバックとフランツの収納魔法の一部を繋げることで出し入れは決まった。

 片付けが終わってからは、僕はアイテムのひとつにあった緑の外套を羽織り、フランツも背負うことにした。


【ほな、いくで! マスターの冒険者としてのスタートや!!】

「うん!!」


 一番近いギルドまで、半日はかかるはずだったんだけど。

 気力も体力も回復してきた僕は……数時間で街に到着してしまったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

処理中です...