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第572話 ポーション錬成
しおりを挟む「本当にあと少しだな。今のフィッシュバーガーのおかげで魔力は回復した。せっかくだから、ケントもポーションの錬成を見ていくといい」
「あ。考えたら一度も見たことないですね」
「私たちは、仮初のような師弟関係だからな」
ロイズさんの提案で、サポーターとして師弟関係を組んだけど……お互いの仕事には干渉することはあまりなかった。お師匠さんは、こちらでは一般的にある液体のポーションだし、僕はポーションパン。作るものがそもそも違うものだから。
とりあえず、せっかくだからとポーション作りを見学することになり……お師匠さんの作業場に移動した。錬金術師の工房だけど、整理整頓されてて材料とかがわかりやすく収納されていたんだよね。
「ここは、僕が掃除してるんだ」
やっぱり、そこはジェイドのおかげもあって成り立っているようだ。
「……まあ。雑にしていたのは認める」
「僕もほとんどすることなかったし、いいよ」
「そうか」
お師匠さんがジェイドを召喚した理由は、家事全般を任せるために普通の精霊を……と言うことだったけど。創始の大精霊に、それを任せているんだから……世間では怒られそう。
とは言え、僕もラティストに店番やパン製造の仕事をお願いしてるけどね?
「お師匠はん。それがポーションでやんすか?」
カウルが奥のテーブルにある青いビーカーの中身が気になったのか、お師匠さんに質問していた。
お師匠さんはそれといっしょに、試験管のストックの中からピンクのものを手に取った。
「ああ。これを組み合わせれば……スインへの封印箇所がうまくいくと思う」
「混ぜるだけですか?」
「理科実験とは違う。これを魔力で調整して、味以外にも効能を加えていくんだ」
「へぇ」
「それはあたしも聞いたことあるわ」
そして実演してくれるらしく、お師匠さんは聞き取りにくう言葉で詠唱を始めた。ビーカーの方が、淡く光っていき……そこに試験管の中身をゆっくり入れていくと。
さらに光っていき、ぽんと音が鳴ったらポーションが出来たのか色が可愛い紫色に変化していった。
「……出来たな」
お師匠さんは鑑定したあとに、満足そうに頷いてから……スインを抱えている僕の前に来た。
「飲ませるんですか?」
「いきなり実験だが、試してみたいんだ。スイン、いいか?」
『! 飲んだら、主のお手伝い出来る?』
「多分だが」
『飲む!』
スインは拒否せずに、食事用の魔法陣を展開させた。
僕とお師匠さんは頷き合い……お師匠さんは慎重にビーカーを傾けていく。
魔法陣にポーションは吸い込まれていき、スインが飲んでいるのか音も聞こえてくる。全部飲んだら、スインが紫色に光ったのだった。
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