スライムからパンを作ろう！〜そのパンは全てポーションだけど、絶品！！〜

第557話 獣魔と魔導具

　あっしは、そろっそろと魔導具に近づくでやんす。

　クラウンはんは、『意思』を持つ存在になっとるかもしれんって言い張ったんや。兄さんの相棒であるあっしは、確認するでやんすよ。

　そろそろ、そろりと身体を近づけて……ちょんちょんと触手を伸ばして突いたでやんすけど。魔導具はちっとも動かないでやんす。クラウンはんの気のせいか？

　しかし、もう一度と突くと……ふわんと浮かんだでやんす！？


『だ……れ？』


　んでもってしゃべったでやんすよ？！　やっぱり、意思が宿っているでやんす！！


(か、可愛い声でやんす！！)


　魔導具はんの性別は女の子でやんすか？


「あ、あっしは、ケント兄さんの獣魔のカウルでやんす。魔導具はんでやんすか？」

『……似てる』

「へ？」

『わ、たし……と似てる。変化、する存在』

「変身能力があるでやんすか？」


　あっしが質問をすると、魔導具はんは頷くように身体を揺らしたでやんす。これは一大事でやんすよ！！

　魔導具はんを抱えて、あっしは兄さんの方に向かったでやんす！！


「カウル？」

「兄さん兄さん！　この魔導具はん、しゃべれるだけでなく変身能力もあるらしいでやんす！」

「えぇえ！？」

「マジか！？　マーベラス、またとんでもねぇもん作ったな？」

「え、この魔導具しゃべれるって……」

『主、私にも名前つけて』

「「しゃべった！？」」

「ははは。本当に意思が宿っているとは」


　クラウンはんは適当なことを言ったかもでやんすけど、事実でやんすからね？

　ラティスト兄さんにも確認してもらえば、たしかにと頷いてくれたでやんすよ。


「完全に意思が備わっているな。ケントの収納魔法で保管されていた分、魔力の質が変わったのだろう」

「え、え、え！？　な、名前って……女の子の声だから、合わせた方がいいよね？？」

「まあ、そこはケントの好きにするといい」


　あっしが魔導具はんを渡すと、兄さんはうんうん言いながら悩んでいたでやんすが。

　少しして決まったのか、よしと顔を輝かせたでやんすよ！


「スイン！　安直だけど、どうかな？」

「あら、涼やかな響きですわ」

「いいんじゃなくて？」

「ど、どうかな？」


　ルカ姉さんたちは賛成でやんしたけど、肝心の魔導具はんは……と見守っていれば。

　ケン兄さんの手の中で、暴れる勢いで揺れたでやんす！？


『か……わいい！　私、スイン！』

「じゃあ、これからよろしく」

『主の戦闘道具。頑張る、私！』

「あはは……」


　兄さんが戦闘に向かうことはあんまりないでやんすけど……なんか、クラウンはんがまた考えていそうな雰囲気あったんですあっしは質問するでやんす。


「クラウンはん？　また何か計画が？」

「ん？　ああ。……これを機に武闘会でもと」

「させるか！　親父のアホ！！」

「おっと？」


　エディはん、ナイスでやんすよ。クラウンはんの目は本気でやんしたから。

　ケン兄さんはあくまで本職はパン職人でもある錬金術師。

　ポーションパンを作っていくのが、生きがいの方でやんすから！