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第555話 諦めきれぬが
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我が息子が普通以上の友人だと言い切る存在。
私もだが、妻も大層気に入ってしまった。とても気持ちの良い人間だからだ。
市井も王族も関係なく、息子を『ひとりの人間』として扱ってくれている。そのような人間は、国内外探しても数えられる人間しかいないのに。
ケントくんは、ただの人間ではなく異世界からの転生者。その事実を知った時は、まさかと思いかけたりもしたが……製造を可能にしたポーションパンの多さに妻のシルフィスと感動を覚えてしまったよ。
(事前にエディから通達はあったとは言え、あそこまでの種類を可能にするとは)
しかも、そのポーションパンは『食べ物』と言うこともあり、市井の人間でも安く手軽に購入することが出来るときた。
エディに国王の地位を譲って、諸国を旅している身になったことで貨幣価値の違いも学んだ今ならわかるが……安すぎないかとも思ったけれど。
ケントくん自身は、たくさんの人々にポーションパンを食べてほしいと言う願いからその価値を必要以上に高くしないらしく。
今日の茶会でも新作を振る舞ってくれたが、エディの横で今は顔を真っ赤にしながら慌てていた。恋仲との馴れ初めを話したことで羞恥心に狼狽えているのだろう。ポーションパンの説明をする時とは大違いだ。
この差が、逆に人間らしくてエディも気に入ったのかもしれない。私もケントくんを、機会があれば養子縁組にしたいほど気に入ったが……エディは絶対嫌だと言うからな。家族より友がいいとは、この子も随分と考え方が変わったものだ。
「そのエリザベスちゃんも連れてきてよかったのに、今日はダメだったのかしら?」
「お袋。エリーも気に入ったからって養女にしようとすんなよ」
「あら、ダメかしら?」
「エリーはダメです!」
「おや」
「まあ」
エディはわかっていたが、ケントくんまで反対意見を出すとは。それほど愛おしい存在なのだね。顔を見るだけでよくわかったよ。
とは言え、エディが自慢げに私たちを見るのはいただけないね? そこで勝ち誇っても、私はまだ本当の意味では諦めていないがね!
呆れられても、これほどの逸材を逃したくはないのだよ!!
なのだが。
「僕は、今の生活がいいんです」
私が次の手を打とうとした時に、ケントくんが自ら意見を言い出したんだ。
「リオーネでポーションパンを作って売って、皆さんの笑顔が見れる場に居られるだけで幸せなんです。将来の生活も少しずつ考えていますし、エディとの関係も今のままがいいんです。僕はそれ以上を望みません」
「「ケントくん……」」
ここまではっきり言われるとは。王族の前でもはっきりと物事を告げられる貴重な存在でも、下手に引き込んで後悔させるようなことはしたくない。
とくれば、折れるのは私たちの方だなとシルフィス共に頷くしか出来なかった。
私もだが、妻も大層気に入ってしまった。とても気持ちの良い人間だからだ。
市井も王族も関係なく、息子を『ひとりの人間』として扱ってくれている。そのような人間は、国内外探しても数えられる人間しかいないのに。
ケントくんは、ただの人間ではなく異世界からの転生者。その事実を知った時は、まさかと思いかけたりもしたが……製造を可能にしたポーションパンの多さに妻のシルフィスと感動を覚えてしまったよ。
(事前にエディから通達はあったとは言え、あそこまでの種類を可能にするとは)
しかも、そのポーションパンは『食べ物』と言うこともあり、市井の人間でも安く手軽に購入することが出来るときた。
エディに国王の地位を譲って、諸国を旅している身になったことで貨幣価値の違いも学んだ今ならわかるが……安すぎないかとも思ったけれど。
ケントくん自身は、たくさんの人々にポーションパンを食べてほしいと言う願いからその価値を必要以上に高くしないらしく。
今日の茶会でも新作を振る舞ってくれたが、エディの横で今は顔を真っ赤にしながら慌てていた。恋仲との馴れ初めを話したことで羞恥心に狼狽えているのだろう。ポーションパンの説明をする時とは大違いだ。
この差が、逆に人間らしくてエディも気に入ったのかもしれない。私もケントくんを、機会があれば養子縁組にしたいほど気に入ったが……エディは絶対嫌だと言うからな。家族より友がいいとは、この子も随分と考え方が変わったものだ。
「そのエリザベスちゃんも連れてきてよかったのに、今日はダメだったのかしら?」
「お袋。エリーも気に入ったからって養女にしようとすんなよ」
「あら、ダメかしら?」
「エリーはダメです!」
「おや」
「まあ」
エディはわかっていたが、ケントくんまで反対意見を出すとは。それほど愛おしい存在なのだね。顔を見るだけでよくわかったよ。
とは言え、エディが自慢げに私たちを見るのはいただけないね? そこで勝ち誇っても、私はまだ本当の意味では諦めていないがね!
呆れられても、これほどの逸材を逃したくはないのだよ!!
なのだが。
「僕は、今の生活がいいんです」
私が次の手を打とうとした時に、ケントくんが自ら意見を言い出したんだ。
「リオーネでポーションパンを作って売って、皆さんの笑顔が見れる場に居られるだけで幸せなんです。将来の生活も少しずつ考えていますし、エディとの関係も今のままがいいんです。僕はそれ以上を望みません」
「「ケントくん……」」
ここまではっきり言われるとは。王族の前でもはっきりと物事を告げられる貴重な存在でも、下手に引き込んで後悔させるようなことはしたくない。
とくれば、折れるのは私たちの方だなとシルフィス共に頷くしか出来なかった。
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