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第546話 両親登場①
しおりを挟む「こんにちは、少々お尋ねしたいことがあるのだが」
「はい、なんでしょう?」
午後の営業も落ち着いてきたところで、ひと組の男女が僕に声をかけてきたんだ。ただ、年齢が四十代くらいの人かな? 優しい微笑みが印象的だけど、なかなかのナイスミドル。
ロイズさんが呪いで歳を取らされていた……あの年齢よりちょっと若いくらい。結構かっこいい人だ。女性の方も、おばさんだけど美魔女って感じ。
とりあえず、詮索よりも接客が優先なので僕は応対することにした。ルカリアちゃんは今お花摘みに行っちゃっているので。
「こちらにあるのは、すべてポーションのパンなのかな?」
「ええ、そうです」
初来店されたお客さんの質問にも、きちんと答えるよ。間違った情報はよくないからね。
僕が返事をすれば、おじさんはぱあっと顔を輝かせた。
「素晴らしい。すべてがポーションだとは! しかも特殊な包装もされている……これは何かな?」
「鍛治と錬金の技能などで生み出した『フィルム』と言います。この店以外にも、リオーネを中心に使われている素材です」
「ほう? しばらく旅に出ていた間に色々変わっていたとは……噂では少し聞いていたが」
「あなた、こちらのパンを買ってもよくて?」
「ああ、自由に選びなさい」
どうやらご夫婦のようで、奥さんの方はポーションパンにとても興味津々で買いたいと旦那さんに許可をもらったら、すぐにトレーとトングを持った。
今はちょうど空いている時間帯だからか、奥さんはあちこちの棚を見つつトレーに乗せていたよ。
「すべてではないですが、付属している素材のおかげで数日から二週間くらいは保存出来ます」
「なんと! そんな素材は他の国で聞いたことがないが」
「街の方々と協力して開発したもので、シリカゲルと言います。このパンにもありますが、内側の小袋がそれです。用途次第で何回も繰り返し使えますよ」
「……物凄く興味深いね」
さてさて、このおじさんは只者でないのは雰囲気でわかったけれど……お貴族さんのお忍びかな? ちょっと誰かに雰囲気が似てるけど……まさかなあ、って思ってたら。
ルカリアちゃんが戻って来て、思いっきり声を上げたんだ。
「ま、まあ!? 先代方!!?」
「おや?」
「あら」
ルカリアちゃんの声におじさんもだけど、奥さんの方も反応してニコニコ笑い出したんだ。
「ルカリアちゃん、先代って?」
「……陛下のご両親ですわ」
「え」
と言うことは、エディのご両親!?
顔は似てないけど、変装してるからかな? びっくりしてたら、おじさん……エディのお父さんは顔に手をスライドさせた。一瞬、光ったあとには……エディを二十年歳を重ねたようなイケメンおじさんの登場となった!!
「ははは。ルカにはあちらの姿を知られていたからね。うっかりうっかり」
「……ご無沙汰しておりますわ」
「うん。風の噂で市井に混じって生活しているとは聞いていたけど、元気そうでなにより。いくらか魔力の質が変わっているようだけど」
「えっと……はじめまして。ケントと言います」
「どうも。僕は愚息の親でクラウンと言うんだ。こう言った場ではおじさんでいいよ」
「いやいやいや!?」
「母のシルフィスと言うわ。実際おじさんおばさんだから、気にしなくてよ?」
「いえいえいえ!?」
エディもエディだけど、ご両親もかなりフレンドリーなんだな!? 本当に中身は似ているってエディが言ってた通りだった!
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