スライムからパンを作ろう！〜そのパンは全てポーションだけど、絶品！！〜

第522話 作っていこう！②

　シェリーは実家の手伝いをしてたらしいから、パン作りは初めてじゃないんだって。コツを掴んだら素早く食パンの生地を丸めていた。

　トラディスとかは違うから、どうすれば？　って四苦八苦しているけど。コッペパンは押さえる箇所とかが慣れないと無理だからね。


【頑張れマスター】

「うぅ……フランツも念動使えば作れるじゃん！　やってみてよ！」

【いやや。今回はマスターが作るのに意味あるんや】

「……えぇ」


　フランツさんは麺台の側に立てかけてあるけど……相変わらずシュールだなぁ。フランスパンの魔剣って。


「フランツさんって、料理出来るんですね」

【兄ちゃん、ワイにもタメ語でええで？　マスターがダチやと認めた相手やからな】

「……いいの？」

【もち、構わん】

「うん」


　魔剣にも認められるだなんて、思ってもみなかったなあ。けど、トラディスがお願いしてたような手伝いはするつもりはないようなので、今回は完全に見学に徹するみたい。


「押す？　しめる？？　ちょっとわかんない！　ケント、もう一回！！」

「いいよー。まずはね？」


　ああ、楽しいなあ。

　異世界に転生したことで、もう二度とパン作りが出来ないと思っていたのに……仲間も出来て、ちょっとハイテクに普通のパンじゃなくて誰かの役に立てるパンが作れるんだもん。

　そのことがとっても嬉しいし、すっごい充実感を感じる。カウルを踏んで、エリーを助けて……この街に生活することが出来るようになり、まだ一年も経っていないが。この街の、この国の住人だって……胸を張って言っていいんだ。

　友達もだけど、恋人も出来た今は……本当に幸せだ。だから、自分のことだけじゃなく、もっともっと誰かを幸せにする役に立ちたい。

　ポーションパンの長期保存の問題も、ちょっとずつ皆さんのおかげで解決していっているから……次はどうしようかな？

　他のパン屋さんにもフィルムとかが使えるようになれば、もっともっとパン業界も潤うだろうし。

　今度は……パン屋さんらしく、商品のブラッシュアップかな？　ポーションとしての効能のアレンジもしていきたいし。

　今は作れないけど、今晩か明日にはラティストたちと話し合おう。パン屋としては、ずっと同じだとリピーターには刺激が足りないだろうから。


「ケント～？　ホイップ出来たと思うんだが」


　考えにふけっていたら、ジェフさんに呼ばれたので行ってみると……ふんわりしているホイップクリームが出来上がっていた。初回でこの出来は……すごいなあ。

　そのあとは、レイザーさんのライスバーガーに使う具材のこしらえをラティストから教わるように伝え、生地組にはカウルのドウコンに入れる時には大層驚かれましたー。