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第513話 お嬢様との語らい

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 ケントが陛下に呼ばれている間に、何故この人に?と言う相手から呼び止められたの。


「お話したいことがありますわ、エリーさん!」


 その相手はルカリア……さんだった。あたしより少し年下でも元は貴族令嬢だから……まだ砕けた呼び方が出来ないのよね? 話し方もまだ敬語が抜け切らない。本人は気にしてないからって、普通でいいとか言うけど……。

 ともかく、ケントを待っている間に借りてる部屋の隅で、ぼーっとしてたら声をかけられたの。


「ど、どうしたんですか?」

「どうしたではありませんわ! お聞きしましてよ? 店長と貴女様の進展について」

「ケントが!?」


 従業員にとは言え、なんでこの人にまで打ち明けちゃうのよ!?


「あ、大丈夫ですわ。わたくしだけでなく、ラティスト様やカウルさんにもお伝えしてくださいましたの。エリーさんの事をそれはもう心配なさっていらっしゃいましたわ」

「……心配?」

「店長は謙虚過ぎな性格でいらっしゃるようですから、エリーさんと少しだけ触れ合っても……嫌がられていないか不安がっていましたわ」

「……ケントらしいわ」


 ちょっと大胆に動いていたのに、根っこの部分は相変わらずなのね。あたしは身構えていたけど、なんだかほっと出来たわ。


「ですから! エリーさんからももっと動かれるべきですわ!!」

「……はい?」


 ケントの気遣いの話だったのに、なんでそっちに方向転換するわけ?

 なんか変なやる気を与えてしまったのか!? このお嬢様に?


「わたくしもなかなかラティスト様へは難しいですが……ほんの少しのきっかけだけでも、男性はそれはもう喜ばしいとおっしゃっていただけましたわ!! ケント様も男性ですから、エリーさんから動かれて喜んでいただくのも有りです!!」

「る、ルカリアさん? なんか飛躍し過ぎてない……??」

「いいえ! 女は貞淑にと言うのは時代遅れ。思うだけではいけませんわ!!」

「だからって!? ケントに……き、キスって出来な」

「考えておられるのなら、やるのみですわ!!」

「えぇええ!?」


 もともと武闘派だとは聞いてたけど、可愛い顔してシェリーみたいに行動派過ぎないこのお嬢様ぁ!!?


「想い合う者同士のはじめてのキス!! きっと素晴らしいものになりますわ!!」

「な、な、なんで知って!?」

「あら? 見ていればわかりますわよ? 店長はもちろん、エリーさんご自身もはじめてだと」

「……うぅう」


 年下のお嬢様にもバレバレだなんて……あたし、そんなにも顔に出やすいのかしら?

 ぽんぽんとほっぺを触ったら……ちょっと熱かった。それくらい、今顔が赤くて熱を出しているのだろう。場所が場所だけど……ケントが今いなくて良かった。

 こんな情け無い顔、彼氏にだって見せたくないもん!!
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