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第453話 今の俺は

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 俺がケントに依頼した『ウェディングケーキ』の候補っつーことで、試作のケーキを俺にも食って欲しいってスバルに出向くことにした。オークションは今日も無事に終わったし、気分が良いところにさらに嬉しい誘いだ。

 ルゥとの結婚への準備も着実に進んでいるし、そのひとつになるケーキもほぼ出来上がってんなら、嬉しいことこの上ない。

 裏口から入らせてもらうと、ヴィーが何故かいたが、リト以外の面子が揃って仕事をしているところだった。表側も盛況していたし、ラティストとルカリア嬢もよく働いていたな。


(……ここも変わったな)


 レイスが徘徊することで手がつけられなかった、所謂『事故物件』だったが。ケントっつー存在が現れ、レイスを討伐して取り込まれていたラティストと契約。さらに、ポーションパンの存在が認知され、一年近く経った今ではリオーネの住民や他所から口コミを聞いた冒険者達が訪れる大事な店になった。

 襲撃事件も何回かあったが……陛下が激怒して改革を徹底してっからな。下手に進言しなくてもそこは大丈夫だろう。俺は俺で、生産ギルドのギルマスとしての仕事をしていくだけだ。

 冒険者引退だけでなく、ルゥへの気持ちを諦めたくらい寿命も縮められた俺に未来がないと思っていたのを。

 ケントが、その未来を切り開いてくれたんだ。マジで感謝してもしきれん。


「んで? どんなケーキなんだ?」

「これです!」


 オープンキッチンに用意されていたのは、半円形のシンプルな作りのケーキ。

 今回は試作ということで小ぶりらしいが、飾りもなくとてもシンプルだ。だが、甘いと言うより甘酸っぱい香りがしていた。


「……何味のケーキだ?」

「チーズケーキです。しっかり焼いたのよりは柔らかくて滑らかな舌触りですよ。お師匠さん達と決めたんです」

「ヴィーもか」

「食の好みを知っているからな。それに美味いものをたくさん食べれた!」

「……あっそう」


 相変わらず、ケントの作るもんには全面的に信頼を置いてるな。どっちが師匠だか時々わからなくなるぜ。だが、レイアと結ばれる前よりも行動的になったのはいいことだ。


「どうぞ食べてみてください。あ、飲み物どうします? ミルク入りよりストレートの紅茶やコーヒーがおすすめですけど」

「んじゃ、コーヒーだな」


 同じ前世出身者でも、ケントはまるで母親のように気遣いがうまい。本人の気質もあるだろうが、嫁さんにしたいような性格だからなあ? エリーよりも調理技術が上だし、稼ぎは両方多いからいい夫婦になりそうだ。とか言ったら、二人で盛大に照れそうなのが予想出来る。

 コーヒーが出来てから、改めてケーキに向き合い、フォークで少し刺すとまるで泡に触れたような感触が伝わってきたぜ!?
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