スライムからパンを作ろう！〜そのパンは全てポーションだけど、絶品！！〜

第411話 浮上して

　よくわからない光景を見た後だと……思いますが。


　わたくしは、また気を失ってしまいましたのでしょうか？


　ですが、ふわふわはしていました。


　とても寝心地が良くて……いつまでも寝ていたいくらい、気持ちになりましたわ。わたくしは、いつから気を失っていたのでしょう？


　屋敷に戻っていたのでしょうか？


　スバルに来ていたのでは？


　たしか……ラティスト様に。


　ラティスト様に会いに来たのです。


　エリシオン陛下にも……お会いしたような？


　ですのに、今はとても気持ちよく寝ています。


　起きなくてはいけないのに。


　起きたくない。


　起きたら、絶望が待っている。


　そのような気がしているのです。


　また……また。


　わたくしは、恋が砕けるのを怖がっているのでしょう。


　城でラティスト様の正体を知った時の、あの絶望感を。


　もう二度と味わいたくはない。そう思っても、矛盾した行動を起こしましたのに。おかしなことですわ。


　だから……もういいのです。諦めましょう。


　ゆっくりと、意識が起き上がるのを感じますと……そこは見覚えのある場所でしたわ。ケント様方のお部屋でした。間違いありません。


　ベッドに寝かされていたのか、わたくしの屋敷の物ほどではありませんが柔らかな布団から起き上がりますと。


　誰かに、強く抱きしめられましたわ！？


　びっくりしましたけど、すぐに声をかけられて……わたくしは固まりそうになりましたわ！？


「……ルカリア、よかった」


　ラティスト様……ですわ？！


　何故……何故ですの！？


　わたくしは何故、ラティスト様に抱擁をしていただけていますの！！？


　びっくり以上に混乱してしまいましたわ！！？



「ら……ラティスト、様？」

「俺のせいだ。危険な目に遭わせて済まなかった」

「危険？」

「堕ちた精霊の仕業で、お前は死にそうになったんだ」

「……そうですの？」


　うっすら覚えている、あの異様な光景は嘘ではなかったのですね。では、今生きているわたくしは……ラティスト様に助けていただいたから？

　わたくしは、生きていることがうれしくなり、少し涙を流しましたが……ラティスト様はまだわたくしを離しませんの！？　わたくしの心臓が保ちませんわ！？


「……本当に、済まなかった。俺のせいで」


　それに、何故ラティスト様はご自分が悪いように仰るのでしょう？　わたくしが、一方的にお慕いしていたから……その精霊が動いたように思うのですが。

　訳をお聞きしようと身じろぎしたら、さらにぎゅっと抱きしめてくださいましたわ！？

　わたくし、頭が沸騰しそうですわぁ！！？