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第408話 憐れむ存在①

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 禁忌を犯した者。


 俺がいない間に……この二十年で、その域に触れてしまった者。


 穢れてしまったが、見たことはある存在。


 あれは、俺が二十年前にレイスに取り込まれる少し前に……近しい存在として、側に置いていた精霊だ。


 何故、と思うことは多いが。


 俺が……悪いのだろう。


 実際のところ、ケントに救出されるまでは里の管理を蔑ろにしていたも同じ。


 そのために、懇願や哀愁などの感情に呑み込まれ……禁忌にまで手を伸ばしてしまった。俺の……落ち度だ。


 あれの召喚した魔獣を屠るのに、魔力を使うたびにその感情が伝わっていた。


 愉悦に浸っているようで実のところは。


 憎悪以上に、悲しみに暮れた……俺を待っていた、ひとつの存在でしかない。


 だが、俺は。


『俺は……決めたんだ。ケントとカウルとこれからポーションパンを作って行くことも。ルカリアと共に歩みたいという気持ちも』


 精霊らにとっては、身勝手な俺の願いだろうが……俺は決めたんだ。あの阿呆神が生み出した存在でしかない俺を、生きる存在に変えてくれたのは……ケントだ。


 そして、人間であれ愛しいと思う出会いをしたのは……ルカリアのおかげだ。


 俺を大精霊ではなく、ひとつの存在として彼らは接してくれるのだ。


 その想いに応えたい。


 俺も共に生きたい!


 そう思える、自我を得たのだ。これは何ものにも変え難い。


 だから、今はお前を救おう。


 禁忌を犯した者への、手向けの浄化を。



【……砕け】

『ぎゃああああああああ!?』



 魔獣の腕や頭を切り落としてから、精霊の方に術を飛ばせば。


 避ける余裕もなかったのか、それに直撃した浄化の焔は……すぐに奴を包み込んだ。逃れることの出来ぬ焔ゆえに、同じ属性であれ払うことは不可能だ。


 俺はその隙をつき、最後に闇を使った剣でそいつの核を突き刺したのだった。
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