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第395話 兄貴分として

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 俺の妹分は、想像以上に繊細な奴だったと今日認識することが出来た。


「……あららぁ」

「……あー」

「でやんすぅ」


 ラティストが実はルカことルカリアが好きだったかもしれんと、ケントから聞いて。ケントとカウルと一緒にこっそり、こっそりラティストがルカをどう誘うか眺めていたんだが。

 ただ『出かけるか?』とラティストが問いかけただけで……気絶しちまった。ラティストもどうしていいか分からずだったから、奴に運ばせてケントらの寝床でルカを寝かせた。頬をつねったが、すぐには起きない感じだ。


「……何かいけないことをしただろうか」


 っつって、ラティストはひどく落ち込んでしまった。いつも無表情とか、食いもん以外特に動じないこの創始の大精霊は……初めての『恋慕』にひどく戸惑っているのだろう。神に等しい存在でも、心を持つのは同じなんだなと俺は逆に安心したが。


「大丈夫大丈夫。こいつの想像を超えた発言されたんで、びっくりしたんだろ」

「……嫌われて、ないか?」

「ないない。絶対ない」


 むしろ、お前に会いに来るのにわざわざ屋敷からこの街に来たんだから……わかってるようでわかってないなあ、こいつ。


「うんうん。ストレートに告白してたら、もっと大変だったかも」


 ケントの言う通りだ。

 ラティストがルカに全ての想いのようなのを打ち明けたら……まあ、破裂しそうな勢いで血が噴いてもおかしくはない。逆にこの程度で済んで良かった。


(……恋愛ねぇ?)


 国王として、世継ぎどうのこうのは王太子時代から妃を受け入れろとはあったが。生憎と、俺はしばらく自由に生きたかった。まだ成人して一年程度の若輩者だ。王としても、人間としても。もう少し伸び伸びと生きたい。

 ただ、ケントとか……今日のラティストもだが。

 こいつらを見てると、そう言うのに悪い気が起きなかった。逆に羨ましいと思ったりしたくらい。

 だが、せっかくなら恋愛というものをしてみたいんだが……なかなか難しい立場ゆえに贅沢が出来ん。ルカだったら、相棒としては良いと思ったが……もうつけ入る隙がない。こいつはラティストと一緒にいた方がいいだろう。

 俺は俺で、一から気の合う奴を探すしかないなあ。どんな奴が出会えるのやら……冒険者のエディで知り合った、顔だけケバい連中はお断りだけどよ。


「……とりあえず。ルカが起きたら、言うか言わないかは任せるが謝罪はしろよ」


 けど今は、やっぱりこう言う人間らしい生活を続けたい気持ちが強い。王としての役割はともかくとして。
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