スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ

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第389話 器用な大精霊?

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「……うーん」

「むー、でやんすぅ」

「やるなあ? ラティスト」

「……そうか?」


 僕らは、エディが亜空間収納から出してくれたゲーム、『チャオジ』っていう神経衰弱に似たもので遊んでいる。

 二人だけじゃなく、四人でも遊べるのでカウルやラティストも加わっているんだけど……一番札を取っているのは、同じ初心者なのにラティストだった。

 一個組み合わせを見つけたら、ひょいひょいって感じにね? 手番とかは、自分で組み合わせを見つけられなかったら移るルールにしているんだけど……さっきからずっとラティストの独壇場と化していた!


「ラティスト~、鑑定とか使ってないよね!?」

「……ないな」


 僕が聞いても、ラティストはどんどん札を揃えていくんだ。残り数を見たら、これはもう彼の勝ちは確定だよ。他はだいたい同じくらいの札しか持っていないし。


「うーん? まさか、ラティストの一人勝ちかあ? こりゃ他のゲームしても同じじゃないか?」

「……普通の神経衰弱しても同じだろうね」

「精霊の里とかじゃ、娯楽はあったのか?」

「……好みの木の実集め程度だな」

「なら、目標物を見つける慧眼は育っているなあ?」


 なので、ラティストの勝ちが決定してからお茶休憩となったわけです。


「……チート過ぎだよ、ラティスト」

「……お前が言うか? ケント」

「ポーションパンだけだよー」


 たしかに、魔法のパンを作れる存在ではあるけど。人間じゃないけど、美形でなんでも器用にこなすことが出来るラティストはもっと凄いと思う。

 エディに目配せしても、肩を落とすだけだった。


「諦めろ。創始の大精霊を普通の人間と同等にするのは難しい」

「……見た目だけだと、わかんないのにね?」


 器用以外だと、燃費の悪い大食いさんなんだけどなあ。

 同じ男でも、めちゃくちゃ綺麗だとは思うけど、慣れると人間じゃなくてもあんまり気ならない。『家族』だからかな?


「異世界からの転生者でも、彼らを同等に扱える君も異質だ。悪い意味じゃない」

「……エディもじゃ?」

「まだいくらか緊張はするぞ? 王だからって、俺も人間だ」

「ふーん?」


 そう言うものかなあって、紅茶を飲みながら思っていると……ラティストが窓の外に立った。


「……ルカリア?」


 って言ったから、エディや僕も窓の方に行った。お店の玄関口は見えにくいけど、たしかに見覚えのある緑色の髪は……ルカリアちゃんだ!

 僕はすぐに行こうとしたけど、ここであることを閃いた。


「ラティスト、行ってあげて」

「? 俺が?」

「いいから」

「……わかった」


 ちょっとしたお願いってことで、ラティストにお出迎えを頼んだ。瞬時にテレポートしていったから、すぐに対応してくれるだろう。


「ルカがまだラティストを諦めきれてないからか?」

「だと思ってね。ルカリアちゃんの勇気を無駄にしたくないんだ」

「ラティストが振ったら?」

「……その時は、お詫び考える」


 頼むからラティスト。誠心誠意の想いをズバッとは振り払わないで~!!
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