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第383話 ケントの決意
しおりを挟む「えーと……ここは、ポーションパンを作るための厨房です」
見られちゃったからには仕方がないけれど、ここはしっかり言っておこうと決めた。どんな反応をされるかわからないけれど、リトくんのご両親だと信じて。
告げてから少し待つと、リトくんのご両親はため息を吐いた。呆れているんじゃなくて、感心? したかのような、そんなため息を。
「……ここで、あんなにもすごいパンを」
「……ええ。あの、ケントさん」
「は、はい」
お母さんの方に呼ばれると、何故か彼女は頭を下げてきた。
「早とちりとは言え、リトの面倒を見てくださってありがとうございました」
「い、いえ。今回はリトくんの意志ですし」
「そうですか。……けど、この子がポーションパンを作れるとは」
「それがよ、リアン。こいつはとんでもねぇ奴だぜ?」
お母さんのリアンさんの不安な気持ちを、ロイズさんが鑑定眼鏡を軽く持ち上げながら、得意げに言った。
と言うことは、今の会話の中でリトくんを鑑定しちゃったのかな?
「……ギルマス?」
「ケントとはまた違うが、リトにも技能のようなもんがあった。しかも、レア中のレアだ。ここでしか役立てないだろうな?」
「……うちの息子が?」
「そうだぜ、パーシー」
お父さんのパーシーさんもびっくりするのも無理はない。どのタイミングでイケメン神様がリトくんにつけたかはわかんないけど……多分、僕以外でポーションパンを作れるのはリトくんだけだろう。
他の人が作れるようになったアレは、あくまで僕の手伝いがないと無理だからね。
「う、うん! あのねあのね! ポーションパンできたの!」
僕が感心していたら、リトくんから爆弾発言が出てきた!? 慌てて、お皿に移されたフレンチトーストのステータスを見ると、たしかにリトくんの名前が入ったポーションパンが出来上がっていたんだ!!
「……出来てる」
「こりゃ、弟子決定じゃねぇか? ケント」
エディに背中をバシバシ叩かれたけど、まだ弟子にしていいか悩む。だって、学校のような場所を卒業するにしてもまだ小学生くらい。
将来の夢を教えてはもらっても……ここで働かせていいのだろうかと。
少し考え込んだが……リトくんが不安そうな表情をして服を掴んできた。落胆に近い表情をこの子にさせちゃうだなんて、僕は悪いことをしているみたいだ。
だったら、と僕はロイズさんに振り返った。
「ロイズさん」
「おう?」
「こう言う雇用形態とか……子どもの場合どうなるんですか?」
僕が聞くと、ロイズさんはニヤリと笑った。
「学舎をきちんと卒業したんなら……生産ギルドに登録書を提出すれば、大丈夫だ」
「お給料とかの度合いは?」
「そこは俺と話し合おうぜ。……なんだ、腹くくったか?」
「……はい」
告げなきゃいけないこととか、秘密は多いけど。
若い子の大切な夢を壊す真似はしたくない。
僕が頷くと、リトくん家族から安心する声が上がった。
「ししょー! よろしくおねがいします!」
「こちらこそ」
とりあえず、ポーションパンの流通の使命がまた一歩前進した瞬間だ。
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