376 / 603
第376話 マブダチの考察
しおりを挟む
俺の提案で、弟子入り志願の坊主をケントと作業させてはいたんだが……。
(ある意味ヤバくね?)
神の恩恵を、近しい存在として与えられた坊主……リトなんだが。
重大なミスをひとつしているのに、こいつは気づいていなかった。
(……親に内緒で、ここに来てるだろうなあ?)
学舎をとりあえず卒業する年ではあるが、まだまだガキに変わりない。
ものの分別が出来ないわけではないにしても……自己判断とかの考えがまだまだ甘い。
特に、俺の祝典日翌日となれば、家族で過ごす日くらいだと市井ならあり得るはずなのに。
親を連れて来ずの、単身での懇願。
とくれば……今頃、親の方はリトを必死に探しているだろう。
ケントは今作業に集中していて考えが回っていないのか……そのことに気づいてない様子だ。
なら、代わりに俺が動くしかない。
ただし、俺だけで動くわけにはいかないから……作業から離れた、ラティストにこっそり声をかけた。
『……ラティスト』
『? 小声でどうした?』
この様子だと、こいつも気づいていないようだ。
俺はラティストと共に、キッチンの端に移動してヒソヒソと話すことにした。
『あのリトだが、親に何にも言わずに来た可能性が高い』
『……悪いことなのか?』
創始の大精霊とは言え、人間じゃないから微妙に観点が違うのは仕方がない。いくらケントの契約精霊でも人間の全部を知っているわけじゃないからな? 特に、ケントは異世界からの転生者だから……ケント自身もこっちの常識を全部知らないでいる。
『場合によってはな? あの年頃だと親が心配しまくってもおかしくない。下手すれば、ケントが犯罪者扱いされる』
『……まさか』
『ケントがそんな奴じゃなくてもだ。リトは小さい子どもだからな。自分の望みでここに来てもまだまだ親の庇護下にいた方がいい』
『……返すのか?』
『いや。親がもしここに辿り着くのなら、リトの願いをきちんと聞かせてやりたい』
『……なるほど』
俺以上のしがらみはないとは言え、リトの夢を壊したくはないからな? それくらい、国王でなくとも導いてやりたいさ。
『だから。街を探査してくれないか? ラティストなら、気配で親を辿れると思ったんだが』
『……やってみよう』
目を閉じて、ラティストはしばらく動かなかった。
きっと成し遂げてくれると思い、俺はちらっとケントらの方を見たが……師弟と言うより兄弟のような関係に見える光景が映ると、このあとの真実を打ち明けるのが少し心苦しかった。
(ある意味ヤバくね?)
神の恩恵を、近しい存在として与えられた坊主……リトなんだが。
重大なミスをひとつしているのに、こいつは気づいていなかった。
(……親に内緒で、ここに来てるだろうなあ?)
学舎をとりあえず卒業する年ではあるが、まだまだガキに変わりない。
ものの分別が出来ないわけではないにしても……自己判断とかの考えがまだまだ甘い。
特に、俺の祝典日翌日となれば、家族で過ごす日くらいだと市井ならあり得るはずなのに。
親を連れて来ずの、単身での懇願。
とくれば……今頃、親の方はリトを必死に探しているだろう。
ケントは今作業に集中していて考えが回っていないのか……そのことに気づいてない様子だ。
なら、代わりに俺が動くしかない。
ただし、俺だけで動くわけにはいかないから……作業から離れた、ラティストにこっそり声をかけた。
『……ラティスト』
『? 小声でどうした?』
この様子だと、こいつも気づいていないようだ。
俺はラティストと共に、キッチンの端に移動してヒソヒソと話すことにした。
『あのリトだが、親に何にも言わずに来た可能性が高い』
『……悪いことなのか?』
創始の大精霊とは言え、人間じゃないから微妙に観点が違うのは仕方がない。いくらケントの契約精霊でも人間の全部を知っているわけじゃないからな? 特に、ケントは異世界からの転生者だから……ケント自身もこっちの常識を全部知らないでいる。
『場合によってはな? あの年頃だと親が心配しまくってもおかしくない。下手すれば、ケントが犯罪者扱いされる』
『……まさか』
『ケントがそんな奴じゃなくてもだ。リトは小さい子どもだからな。自分の望みでここに来てもまだまだ親の庇護下にいた方がいい』
『……返すのか?』
『いや。親がもしここに辿り着くのなら、リトの願いをきちんと聞かせてやりたい』
『……なるほど』
俺以上のしがらみはないとは言え、リトの夢を壊したくはないからな? それくらい、国王でなくとも導いてやりたいさ。
『だから。街を探査してくれないか? ラティストなら、気配で親を辿れると思ったんだが』
『……やってみよう』
目を閉じて、ラティストはしばらく動かなかった。
きっと成し遂げてくれると思い、俺はちらっとケントらの方を見たが……師弟と言うより兄弟のような関係に見える光景が映ると、このあとの真実を打ち明けるのが少し心苦しかった。
21
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
元勇者の俺と元魔王のカノジョがダンジョンでカップル配信をしてみた結果。
九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中
ファンタジー
異世界から帰還した元勇者・冴木蒼真(さえきそうま)は、刺激欲しさにダンジョン配信を始める。
異世界での無敵スキル〈破壊不可(アンブレイカブル)〉を元の世界に引き継いでいた蒼真だったが、ただノーダメなだけで見栄えが悪く、配信者としての知名度はゼロ。
人気のある配信者達は実力ではなく派手な技や外見だけでファンを獲得しており、蒼真はそんな〝偽者〟ばかりが評価される世界に虚しさを募らせていた。
もうダンジョン配信なんて辞めてしまおう──そう思っていた矢先、蒼真のクラスにひとりの美少女転校生が現れる。
「わたくし、魔王ですのよ」
そう自己紹介したこの玲瓏妖艶な美少女こそ、まさしく蒼真が異世界で倒した元魔王。
元魔王の彼女は風祭果凛(かざまつりかりん)と名乗り、どういうわけか蒼真の家に居候し始める。そして、とあるカップルのダンジョン配信を見て、こう言った。
「蒼真様とカップル配信がしてみたいですわ!」
果凛のこの一言で生まれた元勇者と元魔王によるダンジョン配信チャンネル『そまりんカップル』。
無敵×最強カップルによる〝本物〟の配信はネット内でたちまち大バズりし、徐々にその存在を世界へと知らしめていく。
これは、元勇者と元魔王がカップル配信者となってダンジョンを攻略していく成り上がりラブコメ配信譚──二人の未来を知るのは、視聴者(読者)のみ。
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!

暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。

転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました
言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。
貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。
「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」
それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。
だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。
それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。
それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。
気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。
「これは……一体どういうことだ?」
「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」
いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。
――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる