スライムからパンを作ろう！〜そのパンは全てポーションだけど、絶品！！〜

第371話 分別の良い子

「わぁ！？」


　僕がリトくんをオープンキッチンに案内したんだけど、彼は予想通りにすっごく驚いて口をぽかんと開けたんだ。そりゃ、普段見るようなキッチンとかじゃないからね。


「ここが、僕らがポーションパンを作っている大事な場所だよ」

「……ここで？」

「そう。ここで」


　聞き返したりはするけど、無闇に触ろうとしない。これは大事なことなので、まずは花丸をあげてもいいだろう。

　リトくんはちょっとキョロキョロはしたが、やっぱり自分で突進してって機材を触ろうとしなかった。庶民の子どもにしては、お母さんの教育の賜物なのか……いい子だね。


「……パンって、どうつくるんですか？」


　そして、弟子入り希望は出しても、できないことは素直に言えるのも合格点を上げてもいい。


「生地というのを作って、形を整えて焼くんだよ」

「……お料理？」

「基本はね。だけど、道具がないと焼けないんだ。それには……カウル」

「……見せていいんでやんすか？」

「今回はいいよ」

「あい」


　ラティストからおりて、いつもの所定の位置でオーブンに変身したカウルを見ると……リトくんは流石に目を丸くして大声を出した。


「か、カウルさんが、変身！？」

「このカウルがいるから、ポーションパンを作れるんだよ」

「……すごい」


　カウルのオーブンに近づいても、リトくんは無闇に触ろうとしなかった。ちっちゃい子なら好奇心旺盛なのに、よく分別が出来ている子だと分かると僕も安心が出来る。


「……こんな場所だけど。どう？　働いてみたい？」

「はい！」


　そして、僕の問いかけには全力で答えてきた。

　その目には好奇心だけじゃなく、ちゃんと働くって意志がきちんと読み取れた。だけど、問題はひとつだけあった。


「君の意気込みはわかったよ。けど、お母さん達にはちゃんと許可はもらおうね？　君はまだ大人じゃないから」

「……はい」


　こればっかりは、しょうがないからね。

　だから、せめて……と一回だけ、パン作りの体験教室を開いてあげることにしました。


「俺もやるー！」


　暇はいやだからと、エディも参加することにもなったので……何を作ろうか皆で悩んだ。

　リトくんはまだ小学生くらいだから、揚げ物とかはやめておいた方がいいし。


「あ、あの！　ふ、ふれんちとーすとって、ぼくでもつくれますか！？」


　と、リトくんが挙手して言ってくれたから、食パンの在庫を確認したけど……一本もなかったので、食パン製造から始めることになったよ。