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第362話 親友同士の会話

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 シェリーさんが、何故かへなへなになって床に座っちゃった。

 考えられることは、ひとつ。

 僕らの方に来た、ジェフさんに関係があるに違いない。


「……ジェフさん、シェリーさんに何かしました?」


 お酒を取りに来たジェフさんを呼び止めると、彼は僕に向かっていい笑顔になられた。


「おう。近いうちだが、婚姻の申し込みはするぜ?」

「……大胆発言」

「そんくらいいいだろ?」


 僕とフランツの大恩人。

 お兄さんとも引き合わせてくれた、『シリウスの風』のリーダー。

 お世話になりっぱなしだけど、将来の相手が出来るのは非常に喜ばしい。ではあるけど……色々トントン拍子に決まりすぎなような? いや……僕はまだまだ世間知らずなとこが多いから、それが普通かもしれない?


「そーゆー、トラディスこそ」

「はい?」

「マシュの嬢ちゃんと魔法蝶のやり取りはしてるんだろ? 進展はないのか?」

「んー? マシュさんはマシュさんなので」


 たしかに、綺麗で可愛いけど……好みと言うのは自分の中ではよくわかっていない。見た目は同じくらいどころか、僕の方が成長しちゃったけど……釣り合うとかは別問題だからね。

 なので、ジェフさんには首を横に振った。


「なんだ? 王子の位がどうのこうのじゃねーだろ?」

「いや……恋愛がどんなのか。他の人はともかく、自分のことは」

「単純だぜ? 相手を想ってんなら、それが正解だ」

「だと、僕はまだまだですね」


 マシュさんに本当の恋愛感情を持っているかと言われても……いまいちピンと来ない。

 だって、孤児から役立たず。今ではそこそこ有名になったパーティーの副リーダー。

 日々充実しているから……これと言って不満はない。

 お兄さんはいずれ、クレイヴ国の王様だけど……僕はどうしようかな? まだシリウスの風は続けていきたいけど。


「……欲がねぇなあ?」

「えー? 僕意外と欲張りですよ?」

「……そりゃ、恋愛とは別問題だろ?」

「ええ」


 今の生活を、もっと長く続けられたら……と思っていても。お兄さんの将来もだし、ジェフさんとシェリーさんの結婚が正式に決まったら。

 僕は、王子になるか……冒険者をソロで続けていくか。

 恋愛の選択肢がないので、とりあえずそう思っておくことにした。
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