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第356話 改めて知り合う①

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 その女の子に導かれるまま、何故かお店の建物の方へと連れていかれた。裏口……なのだろうけど、その前で待つようにも言われたわ。


「ケントに用事でしょう?」


 私が手に持っている花束を見て、すぐにわかったのだろう。『ええ』と頷けば、女の子は首を縦に振ったの。


「この前の……助けていただいたお礼がまだで」

「ケントは気にしないと思うけど? あ。あたしはエリー。エリザベス=バートレインよ。冒険者なの」

「……冒険者さんが? お店のお手伝いを?」

「んー……まあ、隠してないけど。あたしとケントは付き合ってんの」

「……まあ」


 冒険者と商人。

 その組み合わせがないわけではないのは……目に呪いがかかっていた時も、知識としては知っていたけれど……現実にあるとなるとびっくりした。

 でも、お幸せそうなら何よりだわ。私も、ヴィンクスさんとお付き合いさせていただいているんだもの。


「もうちょっとすればひと段落つくから……せっかくの花束がつぶれちゃったら大変だし、ここで待ってて」

「……ありがとう」


 たしかに、あの人混みの中だと花束がどうなってしまうかわからないもの。その言葉に甘えることにして、私はここでじっとすることにした。良い匂いは強くなるけど、一番はケントさんへのお礼だから我慢も大丈夫。

 と思って、立って待っていたんだけど……足元に、何故かスライムが来たの。

 一瞬身構えたが、触手を出して、左右に振ったわ。


「あっしは、ケント様のスライムでやんすよ。カウル言うんでやんすー」

「しゃ……しゃべった?」


 言葉を話すスライムだなんて、初めて遭遇したわ。けど、ケントさんの……獣魔? とわかると、ちょっとほっと出来たわ。触手以外にもつぶらな瞳が可愛らしい。


「レイアはんでやんすねぃ。ここは一応安全でやんすけど、僭越ながらあっしが護衛につくでやんすよ」

「……あなたが?」

「スライム特有の攻撃以外に、ラティスト兄さんに仕込んでいただいた技があるでやんすよ」

「そ、そう……」


 少しびっくりしたけど、誰もいないままじっと待っているよりは……心強いかもしれない。

 カウルくんは、それから私にも分かり易いくらいにケントさん達のことやポーションパンがどれくらい凄いものかを教えてくれたのだった。


「綺麗な花束でやんすねぇ」

「ありがとう。お母さんが作ってくれたんだけど……ケントさん喜んでくれるかしら」

「ケン兄さんは喜ぶでやんすよ」


 スライムだけど、まるで人間のように感情とかを持っているから……とても話しやすい。スライムでも、カウルくんはきっと高ランクの魔物じゃないかしら?

 それから、ケントさんが来てくれたのはカウルくんと話してて少し経ってからだった。
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