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第312話 ジェイドの偵察
しおりを挟む(……いやぁ、まあー?)
僕はレイアの店に意識体を行かせたんだけど……呪いの根源がまあまあ面倒なことだとすぐにわかった。
何故気付かない?
もっと前から……僕でも気づいただろうに。
根源そのものが、『精霊』が関わっていただなんて……大精霊として失格だ。レイアを取り巻く、根源の魔力の質が……闇の精霊だったと意識体越しで気付くだなんて、僕ってばバカバカ!
契約者が好ましいと思っている相手に、なんで気付かなかったんだろう!?
(闇の……ラティスト兄さんの配下の方じゃないか)
僕は翠……兄弟だけど、司る種が違う。父上達だって違うし、創始の大精霊はそれぞれ違うのが当たり前。創世の時に、あのおバカ神に与えられた使命なんだけど……大精霊だけじゃ大変だからと配下の精霊達は顕現してもらっている。
今回はその中の、兄さんが司る種のひとつ『闇』の方の配下が問題を起こした。
人間と交流しないでいいじゃない。手篭めにする手段として、呪うのはよくない。むしろ、禁忌と言っていい。なのに、その精霊はやってしまったんだ。これはもう、僕とかに察知されたら……あの精霊はお終いだ。
僕もだけど、ラティスト兄さんが黙っているはずがない。いつもはヴィンクスを鬱陶しそうにしてても……ケントの師匠と言うことでなんだかんだ認めているからね。
だからって、ヴィンクスと直接契約している僕の方も黙ってはいないよ?
翠以外に、風。それを司る僕にだって……出来ないことはない。幸い、レイアの実家の店は花屋だ。充分僕の配下である精霊がいてもおかしくはない。
意識体を介して、僕は花の子のひとりに声をかけた。……物凄く驚かれたけどね?
『な、ななな、何か!?』
まあ、街中に創始の大精霊が意識体でも現れたらこうなるか?
僕は大丈夫だよと、笑顔で言葉を続けた。
『ここの娘に……呪いがかかっているのは知ってる?』
『! ……はい、生まれた時から』
『……何故、手を貸さない?』
『つ、強い……です。私程度では』
『……なるほど』
低級程度では歯が立たない。となれば、中級以上……創始のではなく、大精霊には部類するような。色々面倒くさいな!? 恋心って!! 僕が言い聞かせても、ここまでレイアに呪いをかけ続けてきたと言うことは、もう手遅れだ。
とは言え、僕がサクッと終わらせても意味がない。
せっかく、ケント達が動いてくれているんなら……皆でこらしめてあげよう。
ヴィンクスもヴィンクスで、ポーションの方はそろそろ完成に近づいている。だから、一方的な解決をしても良くない。
「ありがとうございます」
レイアは僕の意識体が見えていないから、客とかの接客をいつも通りにしている。柔らかい微笑みは男女関係なく和ませてくれるものだけど……あれは、人間の男もたぶらかしそうだなあ? 心情を読んじゃえば、ヴィンクスか誰かを思っているかわかっても……敢えてそうしない。
僕の当てずっぽうで、ヴィンクスは焚き付けたけれど……そこばかりは二人の問題だから。
(頑張りますかねぇ?)
とりあえず、報告した時の反応は怖いけど……兄さんに念話送ろうっと。
応援ありがとうございます!
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