スライムからパンを作ろう！〜そのパンは全てポーションだけど、絶品！！〜

第308話 突撃されるが

　力を貸して欲しい？

　何か大変な事でも起きたのかな？

　とは言え！！


「お……おししょ……さ、苦しく！？」


　肩を思いっきり揺さぶられるから、ぐわんぐわんして気持ち悪くなってきた！！

　一向にやめてくれなくて、ラティストが『やめろ』と拳骨をお見舞いしたのか、お師匠さんの手が離れて床にごっちんこしちゃってた。

　そこで初めて、お師匠さんの後ろに呆れ顔のジェイドが立っているのが見えたけれど。


「ごめんねー、ケント。この子、今恋煩いでさ？」

「……恋煩い？？」


　と言うことは、お師匠さんに好きな人が出来た！？

　誰だろう！？　僕の知らない人かな？

　ルゥさんじゃないのは、ジェイドの言い方からわかるけど。


「……誰だ？」

「誰でやんすか？」

「目に病を抱えてる女の子。多分、ヴィンクスには脈有り」

「「おぉお！！」」

「……その病を治すのに、ヴィンクスのポーションではダメだったのか？」

「うん。一時凌ぎ程度」


　お師匠さんのポーションだって、Ａ級錬金術師ってランク保持者だから……効果はすんごいのに。それでもダメって……よっぽど大変な病気？　障害持ちな人なんだ。

　スバルに来る人は基本的に冒険者さんか、住居区の主婦さんが多いから……病気目的で来たのは、この前の男の子とか。


「けど……僕で手伝えるかな？　僕らのパンは効果がランダムにつけられるんだよ？」


　イケメン神様に、効果がランダムに付与されるから……自分で調整出来ないのが大変なんだよね？

　自分で願ってそう言うパンを作れたことは……今まで一回もない。

　レイザーさんのは、『たまたま』出来たのを渡せたからだし。


「うーん。普通の病じゃないと思うんだ」


　僕の質問に、ジェイドは首を横に振って答えてくれた。


「……呪いか？」

「その可能性は多いにあるよ」


　ラティストの言葉に、今度は首を縦に振った。


「盲目にしては中途半端過ぎる。ちょっと、妬みの思念がかじりついているんだ。多分呪いだと思う」

「…………酷い」


　私利私欲で他人に迷惑をかけるだなんて……許せない！！

　僕、女の子には会ったことないけど……お師匠さんの好きな人になんてことをするんだ！！


「……だから、ジェイドの見解を聞いて。ここに来た」


　お師匠さんがやっと復活して、立ち上がってからズボンをぱんぱんと払ってた。


「解呪のポーションパンはあるのだろう？　あれを研究用に一個売って欲しい。それを私が自分で解明するから」

「……ただ、ポーションパンで解決したくないんですね？」

「今回は私の問題だ」

「……わかりました」


　それなら、とおやつ用に取っておいた薄皮の小豆あんぱんを渡した。お金は貰わず、是非有効活用して欲しいと僕が餞別として渡したのだ。

　だけど……僕も僕で、黙っているわけにはいかない。

　エリーちゃんのことはもちろんだけど……これはきっと、早いうちになんとかしないと大事件になるかもだから！！