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第306話 こっちもこっちで

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 あたしは、今ちょっとピンチだ。


「エリー? それ本当?!」


 仲の良い冒険者のシェリーとお茶してるんだけど……個室に入って、ケントから誕生日プレゼントにもらった指輪のことを説明したら……まあ、怒られているのよね?

 シェリーがジェフ以外のことで怒るのは珍しいから。


「あ……うん。ケントからプレゼントって」

「そうじゃないわ!」

「へ?」

「そんな素敵なプレゼント貰ったのに……プロポーズされてないの!?」

「ぷ、プロポーズ!?」


 たしかに……ちょっと、ちょっとだけ期待はしたけど。

 ケントはいつも通り。恋人として接してはくれるけど……まだキスもしてない相手とそんな事!? ……たしかに、あたしの両親との挨拶は済ませているけれど。


「そうよ!! S級ランクのマーベラスさんが作ったんでしょう!? 下手すると国宝級よ!!」

「……まあ、そうだけど」


 シェリーには入手経路は言ってないが、授与石の事は伝えてある。まだラティストが創始の大精霊だってことは簡単には言えないからだ。

 けど……マーベラスさんがケントの依頼をほいほい受けたのは、授与石とケント自身の人柄を気に入ったからだろう。派手だし、性格は独特だけど……気に入った相手には結構真摯に向き合う人だったから。


「だからよ! それだったら、もうプロポーズ同然でしょう!?」

「……いやいやいや。飛躍し過ぎ」

「エリーは自信持たなくちゃ!」

「……シェリー」


 女は恋バナが好きとは言うけど……シェリーも漏れなくそうね。

 自分だって、ジェフって恋人がいるけど……お互い有名人だから、街中じゃ気軽にデート出来てないんじゃ?

 今言うべきじゃないけど。


「じゃ、エリーはケントさんとの結婚は嫌?」

「……嫌じゃないけど」


 ケントのことは……普通の恋以上に大好きな自覚はある。

 お互いあんまり口にはしてないし……デートでも手を繋ぐくらいだけど。

 あの人以外……将来の相手は考えられないわ。

 それくらい……その、愛してるから。


「それだったら、聞いてみる価値有りよ!」

「……女から?」

「大丈夫よ。そこまで無理な質問じゃないんだから」

「……うーん」


 ケントの性格考えると……聞いたら、盛大に慌てそうなイメージあるけど。

 でも、そうね。

 先に進むかどうか……少しばかり、聞いてみるのもいいわね?


「無責任な回答次第では、私の拳が炸裂するわ!」

「……やめたげて」


 あんたの腕力は、そこいらのごろつき以上の力があるんだから!!

 ケントはほとんど一般人なのよ!?
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