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第302話 こちらの恋路①
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ケントが、エリーと誕生日デートをしているとは言え。
「……のどかだなあ」
「のんびりだねぇ?」
私には直接的に関係がないので、今日も今日とてポーション作りに勤しむだけだが。
ジェイドがいることで片付けは楽になった。契約関係で、創始の大精霊を使役することになったが……特に彼は雑務を気にしていないのか、今日もコーヒーを淹れてくれた。
下手なカフェに行くより断然美味い!
「……ケントはうまくいっているだろうか?」
「決め手には欠けそうだけど」
「……そこだな」
特殊な条件で転生させられたとは言え……ケントは大人と子供の中間くらいの青年だ。
こちらの世界では成人しているが、あちらではまだまだ子供の一歩手前。
であれば、指輪の意味を本質的にわかっているのだろうか?
エンゲージリング……のつもりではなさそうだったが。
「……そう言う君はいいの?」
コーヒーをまたひと口飲むと、ジェイドがじーっとこちらを見つめてきたのだった。
「うん?」
「君も人間だから、いい歳してるじゃない? 誰かいないの?」
「……いるように見えるか?」
顔立ちは整えられてしまったが、下手に言い寄ってくる肉の塊らを相手にしている気にはなれん。
ロイズのように、ルゥに気があるわけでも全然ない。
だから……未だ独り身ではあるのだ。
「全然見えない」
って、ジェイドにもきっぱり言われてしまうからなあ?
それくらい……女性には縁がない。
幼馴染みらは特殊過ぎて……ルゥにはそう言った感情を持ったことがないのだ。諦めきれないロイズは辛抱強い人間だ。
「私はこのままでいいさ。自分でもなんだが、面倒な性格の野郎と一緒になりたい女性はいないだろう?」
「自分で言っちゃうんだ」
「下手に自覚がないよりマシだ」
「まあ、そうだけど」
とここで、来店の知らせがあるドアベルが鳴った。
鳴り具合から、急ぎの客ではない感じはしたのだが。
「こんにちは、エヴァンス先生」
薄青の落ち着いた色合いの長い髪。
少し線は細いが、浮かべているのは笑顔。
私を安心させてくれる要素が多い女性だ。
歳は、たしかケントらより少し上だったか?
「いらっしゃい、レイア」
この子は定期的に私のポーションを購入してくれる女性。
あの下品な女共に比べたら、別枠と言っていいくらい好印象を持てる女性だ。
ただ……彼女は。
「すみません、また目に光が届かなくなってしまって」
目が少し見えにくい。
先天性のものらしいが、完治は魔法医でもポーションでも難しい。
私のポーションでは、悪化を少し緩められる程度だが。
「いや、早く来てくれる分は大事ない。悪化してからの方が治りにくいからな」
ジェイドに彼女への茶かコーヒーを頼み、彼女に処方してあるポーションを取りに行く。
見つかれば、彼女から代金をもらい……すぐに試してもらうと。心なしか、目の瞳孔が輝いているように見えた。
「……さすがは、先生のポーションです」
にっこり笑顔になると、少しばかりこちらの内面が温かになっていくようだった。
気の優しい女性の笑顔は和むほどだ。
「とは言え、多用し過ぎもいかんな。私も改良点を探してみよう」
「いえ。今は少し先生のお顔も見えていますし、大丈夫です」
それでは……と、礼儀正しく頭を下げ、帰っていった。
彼女がここに通うようになったのはここ数ヶ月だが……何か力になれないだろうか?
A級錬金術師とは言えど、患者を完治させられるのは……私なんかよりケントの方が上だ。
となれば……ケントに、改めて頼ってもいいかもしれん。
「……ヴィンクス。あの子、特別視してない?」
「……は?」
黙ってたジェイドが、何故か意味深なセリフを口にしたのだった。
「……のどかだなあ」
「のんびりだねぇ?」
私には直接的に関係がないので、今日も今日とてポーション作りに勤しむだけだが。
ジェイドがいることで片付けは楽になった。契約関係で、創始の大精霊を使役することになったが……特に彼は雑務を気にしていないのか、今日もコーヒーを淹れてくれた。
下手なカフェに行くより断然美味い!
「……ケントはうまくいっているだろうか?」
「決め手には欠けそうだけど」
「……そこだな」
特殊な条件で転生させられたとは言え……ケントは大人と子供の中間くらいの青年だ。
こちらの世界では成人しているが、あちらではまだまだ子供の一歩手前。
であれば、指輪の意味を本質的にわかっているのだろうか?
エンゲージリング……のつもりではなさそうだったが。
「……そう言う君はいいの?」
コーヒーをまたひと口飲むと、ジェイドがじーっとこちらを見つめてきたのだった。
「うん?」
「君も人間だから、いい歳してるじゃない? 誰かいないの?」
「……いるように見えるか?」
顔立ちは整えられてしまったが、下手に言い寄ってくる肉の塊らを相手にしている気にはなれん。
ロイズのように、ルゥに気があるわけでも全然ない。
だから……未だ独り身ではあるのだ。
「全然見えない」
って、ジェイドにもきっぱり言われてしまうからなあ?
それくらい……女性には縁がない。
幼馴染みらは特殊過ぎて……ルゥにはそう言った感情を持ったことがないのだ。諦めきれないロイズは辛抱強い人間だ。
「私はこのままでいいさ。自分でもなんだが、面倒な性格の野郎と一緒になりたい女性はいないだろう?」
「自分で言っちゃうんだ」
「下手に自覚がないよりマシだ」
「まあ、そうだけど」
とここで、来店の知らせがあるドアベルが鳴った。
鳴り具合から、急ぎの客ではない感じはしたのだが。
「こんにちは、エヴァンス先生」
薄青の落ち着いた色合いの長い髪。
少し線は細いが、浮かべているのは笑顔。
私を安心させてくれる要素が多い女性だ。
歳は、たしかケントらより少し上だったか?
「いらっしゃい、レイア」
この子は定期的に私のポーションを購入してくれる女性。
あの下品な女共に比べたら、別枠と言っていいくらい好印象を持てる女性だ。
ただ……彼女は。
「すみません、また目に光が届かなくなってしまって」
目が少し見えにくい。
先天性のものらしいが、完治は魔法医でもポーションでも難しい。
私のポーションでは、悪化を少し緩められる程度だが。
「いや、早く来てくれる分は大事ない。悪化してからの方が治りにくいからな」
ジェイドに彼女への茶かコーヒーを頼み、彼女に処方してあるポーションを取りに行く。
見つかれば、彼女から代金をもらい……すぐに試してもらうと。心なしか、目の瞳孔が輝いているように見えた。
「……さすがは、先生のポーションです」
にっこり笑顔になると、少しばかりこちらの内面が温かになっていくようだった。
気の優しい女性の笑顔は和むほどだ。
「とは言え、多用し過ぎもいかんな。私も改良点を探してみよう」
「いえ。今は少し先生のお顔も見えていますし、大丈夫です」
それでは……と、礼儀正しく頭を下げ、帰っていった。
彼女がここに通うようになったのはここ数ヶ月だが……何か力になれないだろうか?
A級錬金術師とは言えど、患者を完治させられるのは……私なんかよりケントの方が上だ。
となれば……ケントに、改めて頼ってもいいかもしれん。
「……ヴィンクス。あの子、特別視してない?」
「……は?」
黙ってたジェイドが、何故か意味深なセリフを口にしたのだった。
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