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第283話 その勇気を見て
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小さい子どもなのに……えらいわ。
持ってた、小さな布袋には……多分ためていたお小遣いを入れてあるんでしょうけど。
ケントさんのポーションパンは、効果絶大だもの。
これくらいの子どもだったら、母親と一緒に買いに来たことがあってもおかしくないわ。
ただ……ケントさんのパン屋は朝とおやつ前の営業に分かれているから、この子は知らなかったようね?
私とジェフが、買い物帰りにお店を通らなきゃ……この子はもっと泣いてたと思う。
私とジェフが、ここの常連じゃなきゃ……裏口からお願いするのも、きっと出来なかっただろうから。
私が子どもの手を引いて、先に裏口に行ったジェフが……ケントさんと相談してくれていた。私と目が合うと、ケントさんはニコって笑ってくれたわ。
「シェリーさん。その子が?」
「はい。……えーっと、僕お名前は?」
「……リト」
まだ少し鼻声だったから、渡したハンカチで鼻をかんでもらった。
涙はだいぶ落ち着いても、気持ちの面ではまだ安心出来ていなかったようね? あと、意外とびっくりしたのが……私とジェフが『シリウスの風』のメンバーだって言うのを知ってたこと。
多分だけど……父親の方が冒険者とかかしら?
もしかして……看病出来ないのは、薬草とかを採取に行ったから? その可能性は捨てきれないけれど。
「こんにちは、リト君。うちのパンを買いにきたの?」
ケントさんは、リト君の前に立つと……すぐに膝を折って目線を合わせてあげていた。
子どもの扱いに慣れているのかしら? 怖がらない対処をすぐに出来るだなんて……さすがとしか思えない。
「う……うん! お、お母さん……が、風邪……引いちゃって!」
「そっか。風邪に効くポーションだね? いくつかあるけど……まだお店に残っているだろうから、見てみようか?」
「い……いの?」
「もちろん。君だって、立派なお客さんだよ?」
よしよしって頭を自然と撫でている。
もうリト君の気持ちを落ち着かせてしまうだなんて……こう言うところも、ケントさんの魅力ね? エリーだったら、『惚れ直す』とか言いそう。
で、私とジェフも行っていいことになって……表側の鍵を開けてもらってから入れば。少ないけど、棚にはちゃんとポーションパンが置かれていたわ。
「……わぁ!」
リト君は、お母さんと一緒じゃない時に来ていないから……とてもびっくりしていたわ。
普通のパン屋に行ったことがあるか知らないけれど……ここは少し特殊だから。
「さて。風邪に効くやつだね? 甘いのとしょっぱいのだとどれがいい?」
「? いっぱいあるの?」
「あるよ? けど、お母さんのために買うんなら、お母さんの好きなのにしようか?」
「え、えっとね!」
リト君が一生懸命にお母さんが自分のために……買ってくれたパンを思い出した結果。
買ったのは……メープル味のフレンチトースト。
値段も、他のパンに比べれば安かったらしく……リト君のお小遣いでもちゃんと買えたわ。
リト君は、包んでもらってから……出来るだけ、深く腰を折って。
『ありがとう』と言ってから……パンを落とさないように、お店を出て行った。
「……治るといいな」
「……そうだね」
ケントさんのポーションパンは、効果抜群だもの。
食べれば、大抵の傷や病気は快癒出来るけど。
私が完治していない……先天性の魔力不足は、まだだ。前よりは、だいぶマシにはなったけれど。
「大丈夫ですよ!」
私達のつぶやきに、ケントさんは底抜けに明るい声でそう言ってくれた。
振り返れば、満面の笑みだった。
それを見ると……リト君のこともだけど、自分の体質も、いつかちゃんと治ると信じることが出来そう。
だから……『はい』と頷いて、私やジェフも残ってたパンを少し買うことにした。トラディスさん達のお土産もだけど……またいつものフルーツサンドも残ってたから。
明日からも、また依頼の仕事はあるからね!
持ってた、小さな布袋には……多分ためていたお小遣いを入れてあるんでしょうけど。
ケントさんのポーションパンは、効果絶大だもの。
これくらいの子どもだったら、母親と一緒に買いに来たことがあってもおかしくないわ。
ただ……ケントさんのパン屋は朝とおやつ前の営業に分かれているから、この子は知らなかったようね?
私とジェフが、買い物帰りにお店を通らなきゃ……この子はもっと泣いてたと思う。
私とジェフが、ここの常連じゃなきゃ……裏口からお願いするのも、きっと出来なかっただろうから。
私が子どもの手を引いて、先に裏口に行ったジェフが……ケントさんと相談してくれていた。私と目が合うと、ケントさんはニコって笑ってくれたわ。
「シェリーさん。その子が?」
「はい。……えーっと、僕お名前は?」
「……リト」
まだ少し鼻声だったから、渡したハンカチで鼻をかんでもらった。
涙はだいぶ落ち着いても、気持ちの面ではまだ安心出来ていなかったようね? あと、意外とびっくりしたのが……私とジェフが『シリウスの風』のメンバーだって言うのを知ってたこと。
多分だけど……父親の方が冒険者とかかしら?
もしかして……看病出来ないのは、薬草とかを採取に行ったから? その可能性は捨てきれないけれど。
「こんにちは、リト君。うちのパンを買いにきたの?」
ケントさんは、リト君の前に立つと……すぐに膝を折って目線を合わせてあげていた。
子どもの扱いに慣れているのかしら? 怖がらない対処をすぐに出来るだなんて……さすがとしか思えない。
「う……うん! お、お母さん……が、風邪……引いちゃって!」
「そっか。風邪に効くポーションだね? いくつかあるけど……まだお店に残っているだろうから、見てみようか?」
「い……いの?」
「もちろん。君だって、立派なお客さんだよ?」
よしよしって頭を自然と撫でている。
もうリト君の気持ちを落ち着かせてしまうだなんて……こう言うところも、ケントさんの魅力ね? エリーだったら、『惚れ直す』とか言いそう。
で、私とジェフも行っていいことになって……表側の鍵を開けてもらってから入れば。少ないけど、棚にはちゃんとポーションパンが置かれていたわ。
「……わぁ!」
リト君は、お母さんと一緒じゃない時に来ていないから……とてもびっくりしていたわ。
普通のパン屋に行ったことがあるか知らないけれど……ここは少し特殊だから。
「さて。風邪に効くやつだね? 甘いのとしょっぱいのだとどれがいい?」
「? いっぱいあるの?」
「あるよ? けど、お母さんのために買うんなら、お母さんの好きなのにしようか?」
「え、えっとね!」
リト君が一生懸命にお母さんが自分のために……買ってくれたパンを思い出した結果。
買ったのは……メープル味のフレンチトースト。
値段も、他のパンに比べれば安かったらしく……リト君のお小遣いでもちゃんと買えたわ。
リト君は、包んでもらってから……出来るだけ、深く腰を折って。
『ありがとう』と言ってから……パンを落とさないように、お店を出て行った。
「……治るといいな」
「……そうだね」
ケントさんのポーションパンは、効果抜群だもの。
食べれば、大抵の傷や病気は快癒出来るけど。
私が完治していない……先天性の魔力不足は、まだだ。前よりは、だいぶマシにはなったけれど。
「大丈夫ですよ!」
私達のつぶやきに、ケントさんは底抜けに明るい声でそう言ってくれた。
振り返れば、満面の笑みだった。
それを見ると……リト君のこともだけど、自分の体質も、いつかちゃんと治ると信じることが出来そう。
だから……『はい』と頷いて、私やジェフも残ってたパンを少し買うことにした。トラディスさん達のお土産もだけど……またいつものフルーツサンドも残ってたから。
明日からも、また依頼の仕事はあるからね!
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