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第233話 食べ方の違い
しおりを挟む「あ……あんぱん、だと!?」
ケントが……ついに、ついに!?
我らが、前世の故郷……『日本』で生み出された菓子パン。
『あんぱん』の製作に取り掛かれると……魔法蝶で連絡があり!!
仕込みの関係で、午後の休息時間帯に来て欲しいともあったので……私は嬉しさから思わず飛び上がった!!
「どうしたの? ヴィンクス?」
私の喜び様に、契約精霊であるが創始の大精霊の一角でもある……ジェイドが箒を魔法で動かしながらこっちに来たのだ。
「凄いことが起きた!! あんぱんが食べられるんだ!!」
「……あんぱん、って?」
「甘いパンだ! 今までのとは味わいも甘さも全然違うんだ!!」
「……美味しいの?」
「私とケントの故郷では、馴染みのあるパンだな! まあ、好き嫌いは分かれるだろうが」
「へー!」
ジェイドは精霊の里へ、定期的にポーションパンの配達に行くくらい……ケントのパンの味の虜になってしまっている。律儀に、ポイントカードもしっかり貯めるくらいに。
であれば……あんぱんもきっと気にいるだろう。魔法蝶の通達には、『ジェイドも気に入りますよ! 精霊のご飯が小豆だったので』……と、初めて知る知識もあったからな?
「ジェイド、ひとついいか?」
「うん?」
「精霊……もしくは、大精霊にも主食があるのか?」
「あるよー? え、何? それが関係してるの?」
「ああ。小豆を使った甘いパンをあんぱんと言うからな」
「……えぇ?」
どうやら本当のようだが……小豆を食べるにしても、こちらでは『あんこ』の需要がないのか。そもそも作られていないのか。後者が強いだろうな?
ジェイドは考え込んでいても……想像が出来ないのか、首をひねっているばかり。
「基本的に……精霊側ではどのようにして食すんだ?」
「うん? ほとんどお粥だね……僕、あんま好きじゃなかったけど」
「小豆粥か……たしかに、人間でも好き嫌いが分かれるだろうな」
味付けに塩程度で、ボソボソと皮の食感が嫌いだと食べる気が失せるだろう。
だがしかし!
あんこであれば!!
私も食べたい!!
「けど、ケントのパンなら美味しいだろうなあ?」
と、苦手なものを美味しくしてくれるケントの腕前は、ジェイドも信頼しているくらいだ。
「とくれば、依頼された商品はさっさと納品しに行こう。幸い、調合はすべて済んでいる!」
「うんうん! 早く食べたいなあ!!」
「掃除も適度に済ませてから、ロイズのところへ行くぞ!」
「うん!」
待っててくれ、愛しのあんぱん!!
せっかくだから……ロイズも呼ばれているだろうし、コーヒー牛乳の提案もしてみよう!!
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