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第214話『回復グラコロバーガー』

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 食べて、と言われたので……包みを開けてみれば。

 ケントがよく作る……『ハンバーガー』だったわ。

 だけど、挟まっていたのは肉じゃなくて『コロッケ』。それもケントが前世では定番だって言っていた揚げ物。

 芋がホクホクで……最初はコロッケだけで充分な味付けだったのに。ヴィンクスさんが職人と手がけた『ウスターソース』って言うのが加わって、より一層美味しくなって。

 それを……ケントがあたしに?

 けど、普通のコロッケバーガーに『風邪完治』だなんてなかったわよね?


「……これ?」

「それね? 前に試食してもらった『グラタンコロッケバーガー』だよ!! エリーちゃんにもらったレシピ帳で確認したら、風邪薬にもなるって見つけて。で、僕はちゃんと食べたからエリーちゃんにもう一個在庫あったの食べてほしいんだよ!」

「……ありがとう」


 あたしの、贈ったプレゼントが役に立った。

 それも嬉しいけど……あたしに、いつも嬉しい言葉達をくれるケント。

 やっぱり……好きだなあ、とは思ったんだけど。

 お腹が結構空いていたのに……まだしっかりと食べていないことを思い出して。

 グラタンコロッケというのがどんなだったか、ちょっとだけうろ覚えだったけど。

 ケントがわざわざ届けようとしてくれたのを……無駄にしないためにと、あたしはかじりついた!


「!?」


 パンの部分は、ふわっともちっとしていて。

 野菜は……見えていたけど、細いキャベツ。シャキシャキしていて、みずみずしいわ。そこに、メインの分厚いコロッケ。

 ほんのり温かくて……中身は芋じゃなくて、白いソース。

 エビやにんじんの角切りに玉ねぎが入っているけど……しょっぱいのに甘くて濃厚で。上にかかったウスターソースとの相性抜群!!

 夢中になって食べ進めると、ポーション効果が発動する……白い光があたしを包み。

 スーって、少し怠かった体から疲れやらなんやらが消えたのだ。


「効いた?」

「でやんす?」


 ケントとカウルに聞かれたので、あたしは強く首を縦に振った!


「凄い!! 美味しいのに、相変わらず効果すんごい!! だるいのとか全部消えたわ!!」


 ちょっとだけあった、喉のイガイガまで消えたんだもの!!


「良かったぁ。エリーちゃんには元気が一番だもん」

「……ケントもでしょう?」

「ありがとう」


 ゆるく微笑んでくれる、そんな表情でさえ。

 あたしには、極上の褒美と言っていいくらい……心が満たされて。

 やっぱり……この人が好きなんだなって、実感が湧いたわ。

 だから……言うんだ。


「ケント。店はまだ休むの?」

「ううん。あと二、三日は。ラティストに言われたんだよね?」

「……じゃあ。快気祝いってわけじゃないけど……あたしもまだ仕事再開しないし。遊ばない?」

「エリーちゃんと?」

「君が良ければ」


 これはデートじゃないのよ!

 なのに、ケントったら!

 今までにないくらい……いい笑顔で何度も首を縦に振ったのよ!?

 期待しちゃうじゃない!!
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