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第213話 ケントの人望

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 風邪も落ち着いた。

 体力もだいぶ回復出来た。

 まだ、完全じゃないけど……ケントのところに行こうと決めていたのだ!


(で、デート……じゃない!! あ、遊びに行くのよ!!)


 その約束を決めるのに、お見舞いも兼ねて会いに行くくらい……友達としてはいいはずよ。

 しっかりしなさい、エリザベス=バートレイン!!

 あんたは、リオーネの高ランク冒険者なんだから!!

 度胸は人一倍あるはずでしょ!!

 だけど……今日の服装は、冒険者じゃない。

 雪の時期は去ったけど、まだ寒いのでもこもこの上着を着て……外に出た。

 住居区から外に出れば……人混みにすぐ飲まれそうになるわ。けど、あたしは生まれ育った街なので、うまく避けて先に進む。

 避けながら進めば、色んな会話が聴こえてきたわ。


「スバルのパン屋、まだ営業再開しねぇかな?」

「店主が風邪だって」

「この時期の風邪……面倒だかんな?」

「ポーションで治せばいいのに」

「あの人働き過ぎじゃね? だったら、ゆっくり休んだ方がいい」

「それもそっか」


 そう言えば……そうだわ。

 ポーションのパンを作り出せるのなら……それで治せばいいのに。

 でも、ケントはたしかに働き過ぎだから……いい機会かもしれないわ。あの人、休みの日まで市場とかに出かけて買い出しに行くらしいし。

 あたしも……今回の風邪がなきゃ、ほぼ毎日冒険者生活に明け暮れていたもの。お互いに良い機会だわ。

 似たような会話をあちこちから聞いたが、ケントがどれだけ慕われているか再確認出来た。

 あたしが導いて、この街の要になってくれた……ケント。

 あたしの好きな人は、良い影響を与えてくれているわ。

 伯爵のバックアップがついたことで……変な貴族連中からの嫌がらせもないし、実に平和。

 万引きとかは、まだまだ油断出来ないけどね?


「あ、エリーちゃん!?」


 あとちょっとで、パン屋に着くところで……ケントがカウルを抱えて、裏口から出て来ようとしたのだ!?


「け、ケント!? 風邪は!?」

「あ、もう大丈夫! さっきポーションパン食べたから」


 さっき……と言うことは、ラティストに止められたか忘れていたかで、食べるのを……忘れていたのか。

 顔色も良いし、治って良かったわ。

 ただ、出掛けるのかと思ったら……あたしに中に入るように言ってきた。


「出掛けるんじゃないの?」

「エリーちゃんに用があったんだよ」

「……あたし?」

「エリーちゃんも風邪だって聞いてたから……はい、これ食べて?」


 カウルを下ろしたケントは……彼固有スキルの『収納魔法』から、パンの包みを出してくれたわ。
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