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第203話 店主は寝込む

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 ……エリーちゃんに会えない。

 それについて、少し……いや、だいぶショックを受けているようだ。

 あの打ち上げパーティー以降、お店に来てくれないんだ。

 僕に抱きついたことを気にしているのか……シェリーさんと一緒にお店に来ることもなくなったから。

 最初は、『そっか』くらいだったのに。

 だんだんと……仕事でミスをし出すようになり、カウルやラティストにも心配されるくらいになり。

 しまいには……熱で寝込む始末。

 ポーションパンで、風邪回復についてのパンがちょうど切らしていたので……思い切って、お店を休業して僕はベッドで寝込むことになりました。


「けほっ、けほっ」


 転生してから、半年近くは経っても……体調不良になるなんて初めてで。

 しかも、前世でも滅多に引かない風邪だったから……余計にしんどかった。カウルが適度に濡れタオルを変えてくれたので、ちょっとは楽ではあるけど。


「……大丈夫でやんすか。ケン兄さん」

「う……ん。なんとか」

「……ゆっくりでいいでやんすよ。兄さんには休息が必要でやんす」

「……そうだな」


 ラティストも来てくれたようで……前に教えた、余ったパンで作れるシチューのようなのを持って来てくれた。

 いい匂いに、お腹がよく鳴ってくれたよ。体は正直みたい。


「……ありがとう、ラティスト」

「……熱いから気をつけろ」

「うん!」


 ゆっくり起き上がり、お盆を置いてもらってから……自分だとまだ辛いのでラティストが食べさせてくれた。とってもトロトロで美味しくて、パクパクと食べれたよ。


「……ケントには劣るが」

「美味しいよ!」

「……風邪も治せなくはないが。ケントはしっかり休んだ方がいい」

「そうなの?」

「禁じられてはいないが……簡単に治れば、ケントは働き過ぎるだろう? それに、気にかけていることで失敗続きだ」

「……ごもっともです」


 エリーちゃんのことについては……バレてはいないと思うけど。契約している大精霊とスライムだから……感情共有とかできるのかな? とちょっと思っていたら。


「エリーはんの事で熱出すケン兄さんは可愛いでやんす」

「……言っておくが、隠していなかったのはケントだからな?」

「うぅ~~……!!」


 思いっきりバレていたようです!?

 そんなにも……僕ってわかりやすかったのかな!?

 とりあえず、パンシチューは全部完食しました……。


「エリーはんに早い事言った方がいいでやんすよ? もちろん、治ってからでやんす」

「……そうだな。エリー自身も色々悩んでいるかもしれない」

「……そうだよね」


 僕に抱きついたことをめちゃくちゃ気にしていたから……もう一度、本当に気にしていないよと言いたい。

 あと……大好きとも、伝えたい。

 エリーちゃんが、僕を友達としか思っていなくても……大事なことは伝えたいんだ!!

 そう決意したけど……体調はまだ少し落ち着いただけなので、眠ろうとしたら。


「……何か来たな?」


 ラティストがそう言ったので、一階に降りてってから少し待つと。


「ケント!? 店休みなのか!!?」


 って、元気な声が下から聞こえてきたのだ。

 他の誰でもない……マブダチ、エディの声だった。
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