スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ

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第193話 恋する乙女

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 ケントと一緒に会える。

 その約束が、またひとつ出来て……嬉しいんだけど。


「……どう思われているんだろ」


 あんな風に、気前良い感じで誘ったとは言え……ケントは本当に良いのか、最初は遠慮がちだった。

 シェリーには、ポーションパンでめちゃくちゃ助けたって意味では恩人であるから……彼女は意気込んでいたけど。

 あたしだって、そう思ったし……大勢で騒ぎたいのは本音ではある。

 だけど、でも。

 パン作り以外だと、意外にも控えめな態度が多いケントだから……ほんとは迷惑だったんじゃないかって。

 あたしは……彼に恋してるから、余計に臆病になっているのだ。


「……そんなことないと思うけど」

「そうだよね?」


 今、あたしは。

『シリウスの風』が滞在している宿屋の、女部屋に来ている。ただしそこには、シェリー以外にトラディスもいるわ。宿屋のルールとして、メンバーや許可された男性であればこっち部屋にも来れるの。

 それはいいとして。


「……だって。ちょっと困ってた感じだったから」

「僕は居合わせていなかったけど……そんな気にしなくていいと思うよ?」

「うんうん。ケントさんらしいと思うけど」

「……そうかなあ?」


 ちなみに、トラディスにはあたしがケントを好きなのは知られていた。あたしが自覚する前からわかってたみたい。ほんと……観察眼鋭い男だわ。


「自信満々がいつものエリーさんらしくないと思うよ? ちゃんと伝えた方がいいと思うけど」

「……早く言えたら。こんな……悩んでない」

「けど、トラディスさんの言う通りよ? ケントさん、ラティストさんほどじゃないけど……結構人気じゃない」


 そう。シェリーが言った理由も実はある。

 あたしも、自覚する前から感心はしてたけど。

 創始の大精霊である……ラティストのような美貌には劣るが。

 それなりに、整った顔立ちで常にお客には笑顔を忘れないケントは……裏では、女共に結構人気があるのだ。

 ラティストの親衛隊も……一部はケントに乗り換えってるって噂があるくらいだし!!

 あたしなんか、豪族でそこそこ顔良い程度じゃ……ケントに想いが受け止められるか自信がないのよぉ!!


「んー。けど、当たって砕けるもよくないけど」


 悩んでいると、トラディスがぽんと手を叩いたわ。


「トラディス?」

「トラディスさん、何か思いついた?」

「いっそ、打ち上げの最後にエリーさんが告白しちゃえばいいんだよ」

「おお!」

「なんでよ!?」


 なんで、そんな公開告白しなくちゃいけないわけ!?

 突っかかろうとしたら、まあまあと手で制されたわ。


「君は彼にとっては、一応かなり親しい女友達じゃない? もし応えてくれなくても……何かしら返事はしてくれると思うよ?」

「…………そう、かしら」

「エディさんには、僕とかは会ってないけど。ケントさんは、他人を蔑ろにする人じゃないのは……エリーさんもよく知ってるんじゃないかな?」

「……うん」


 自分より、他人を大事にするとこも……好きに、なったのよね。
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