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第185話 精霊召喚

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「むぐむぐ……このパンは、いつも以上に美味いな!」


 ケントの店で……今日は普通にパンを購入したのだが。

 具材にマヨネーズ系を和えた……クロワッサン生地のものが新作だ。

 連日の労働で、精神力や魔力も回復出来……かつ、美味いパンであるからこそ、私はそれらを食べていく。

 特に気に入ったのは……アボカドとタルタルソースに、スモークサーモンのマリネを和えたものだな。


「……我が弟子はどこを目指しているのだろうな」


 専門学生だったとは言え、作れるパンがめちゃくちゃ多い。

 余った材料などもうまく使いこなしている。

 無駄にしないし……それがさらにポーションのパンとなっていく。

 私は私で……彼の師匠と言うことで、これまで以上に仕事が増えたが。そろそろひとりでこなせなくなってきた。

 で、あれば!! だ。


「人員増加のために……何かを使役しなくては」


 ラティストのように、創始の大精霊を扱えるなどは思っていないが。

 精霊を召喚するくらいは……出来なくないかもしれない!!

 クロワッサンで、魔力もかなり回復したからな!

 今なら……陣を使って召喚出来るだろう!!

 そうと決まれば……と、魔法陣を描いた布を持ち出し、ある程度片付けた床の上に広げた。


「……さて」


 供物はひとつ。

 私の血だ。軽くナイフで傷つけて、ほんの一滴陣に垂らすだけだが。

 準備が整ったら……詠唱を唱えることにした!


『……来たれ、我が望む者よ』


 転生する前だったら小っ恥ずかしいが……こちらではこれが普通だからな!

 構わず唱えていくと……陣が緑色に光り、塊が出てきたかと思えば……人のような形になっていく。


「……望んだ者は、そなたか? ヒトの子よ」


 男か……まあ良い。

 下手に美女の精霊が来るより、ずっといいからな?

 ただ……声にどこか聞き覚えがあるような気がした。

 姿が見えてくると……私以上に濃いエメラルドグリーンの瞳が特徴の、美しい男性体である精霊が立っていたのだ。


「……ああ。私が召喚者だ。精霊殿よ」

「…………あれ?」


 私が自分を軽く主張すると……精霊は、威厳を無くした様子で私を見てきたのだ。


「うん?」

「……ケントの師匠?」

「は? 何故……それを」


 初対面のはずの精霊が……何故ケントを知っているんだ?!

 すると、精霊はぽんと手を叩いたのだ。


「あ、そっかぁ。君とは直接会うのは初めてだっけ? 僕はジェイド。ラティスト兄さんの弟だよ」

「……創始の大精霊?」

「うん、そう」


 なんで、創始の大精霊を召喚出来たのだ!?

 ケントのパンを食べたせいか!?

 凄すぎるだろう!!?
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