スライムからパンを作ろう！〜そのパンは全てポーションだけど、絶品！！〜

第162話 神らの観察

「​───────お……オニオングラタンスープ、だとぉ！？」


　今日も今日とて、我は水鏡を通して……ケントらの様子を眺めていた。

　こちらの世界での天候などの事象が、ケントやヴィンクスのいた世界とは違うことを。少しばかり……気になったのだが。

　ヴィンクスはいなかったが、他の者らの手を借りても……営業が難しいと判断した後！

　なんと、寒い日には嬉し過ぎる『オニオングラタンスープ』をあの者は作ってしまったのだ！！

　うっかり……私は驚いて、ポーションにさせてしまったが。


『……神よ。何をされているのですか』


　御使こと、白猫のシロトにも盛大に呆れられてしまったが……仕方がないではないか！！

　この前、こやつにケントのパンを買ってきてもらえたとは言えど！　温かい出来立ての料理を食べられない歯痒さ！！

　食事は基本不要とする我ら神だが。

　ケントらが、元居た世界では……様々な美味なるものが存在すると言われていた。聞いたのは、あちらの世界を管理する神だが。ここのところ、交信などをしていないので久しぶりにしてみよう。

　は、ひとまず置いておくが。


「オニオングラタンスープだぞ！？　あちらの神に聞いたが……冬に最適なスープだと！！」

『……ですが。何故、ポーションにしてしまったのです？』

「…………つい、うっかり」

『うっかりですみませんよ。今回はまだ身内の範囲で食すようですが』

「……………………我も、食べたい！」

『ダメです』


　即座に却下されてしまった。

　こやつに買ってきてもらいたくても……今日は雪の関係で営業しないようだから、お使いにいかせられん！！

　何ということだ！！

　神であるが故に……気軽に行けないだなんて！！


【けーんーとー！！】


　水鏡の向こうで、聞き覚えのある男の声が。

　覗いてみると、必要以上に冬服を着込んでいるヴィンクスが軽業などを使って……店に来たようだ。

　あれほど、引きこもりの性格であったのに……こやつを回復薬の流通の先駆けとして転生させたのだが……わずかではあるが、改善させただけだった。ケントのように、食べ物をポーション化させる方がある意味効率が良過ぎるせいで……こやつの意味がないように見えたが。

　今では……師弟関係を組み、日々精進するように生活を変えつつある。

　不慮の事故で、それぞれあの世界では死を迎えたが……同じ国の出身だったこともあり、良好な関係を築いているのだ。

　とは言え、我以上に食欲に忠実過ぎるのは……すぐに駆け寄れる分、羨ましい！！

　夢路で、【鑑定】を与えたのだから……もう少し、活動力を他に使わぬか！？


『……あの者の活力。止めるのは至難の業かと』

「…………わかっている」


　ケントの周りに……様々な存在がいるのだから。

　我らの落ち度のせいで、夢を一度は壊してしまった。

　それを……違う形で叶えられたのなら、我とて少しばかりの我慢はせねばならん。

　とは言え！　ヴィンクスも食べようとしていたオニオングラタンスープは魅力的過ぎるぅ！！？