上 下
106 / 559

第106話 一件落着?

しおりを挟む


「……で?」


 場所は変わりまして……トラディスさん達『シリウスの風』が拠点にしている宿屋。

 僕が来るのはまだ二度目だけど、昼間は初めてだから……広く感じちゃうんだよね?

『シリウスの風』はシェリーさん以外男だけだし、大部屋を借りるのは仕方がない。

 と、現実逃避している場合ではないのです!!

 変装を解いた僕らは……待っていたジェフさんにより、何故か正座モードにさせられている。どうやら、トラディスさんの相棒である魔剣のフランツさんにより……異世界……多分僕がいたとこ……の文化をちょくちょく取り入れているので、これも知っているのだとか。

 とにかく、めっちゃ怒って仁王立ちしているジェフさんが怖いよぉ!?


「「「「…………」」」」


 なんで怒っているのか。

 最初はわかんなかったけど……だんだんと縮こまっていく、僕の前にいたトラディスさんの背中を見ると……なんとなくでもわかってきたぞ!?


「あ、あの~……」


 ここはもう勢いだ! と僕は挙手してみた。

 すると、ジェフさんはまだ不機嫌だが……『なんだ?』と返事はしてくれた。


「……もしかして、トラディスさんの声。あの時聞こえたんですか?」


 ジェフさんがシェリーさんを追いかけていく時に、トラディスさんがジェフさんを応援した掛け声。

 思い当たるとすれば、あれしか思いつかない。


「……ああ」


 と、ジェフさんは頷き、トラディスさんに視線を向けた。

 トラディスさんはさらに縮こまってしまい……ちょっと可哀想に思えてきたよ! ジェフさん落ち着いて!?


「んだよ。いつから気づいてた?」


 レイザーさんは諦めたのか、思いっきり肩を落とした。

 そのすぐあとに……ジェフさんから半分本気のようなゲンコツをお見舞いされたので、床に突っ伏してしまったが!?


「チリチリ視線は感じてたぜ!? お前ら……わざとだったのかよ!!」

「じぇ、ジェフ……落ち着いて?」

「おまけに、なんでケント達までいやがんだ!?」

「……あたし達は、シェリーの友達として見守ってただけよ?」

「…………はぁー……」


 エリーちゃんも開き直っていたけど……僕は無言で頷くしか出来ない。

 ゲンコツはないだろうけど……ため息を吐いているジェフさんは、まだ少し怒っているみたいだし。


「で、でも! 私達を応援してくれてたんだよね? ……あ、ありがと。エリー、ケントさん」

「どうってことないわ」

「……シェリー」


 真っ赤になってて可愛いシェリーさんが、天使のように見えたよ!

 エリーちゃんは勝手に正座姿勢を止めて、シェリーさんにぎゅっと抱きつきに行った。女の子同士の特権だね?


「えーっと……とりあえずすみません。覗き見しちゃってて」


 ジェフさんもちょっと落ち着いてきたから、僕は改めて謝罪した。その言葉に、ジェフさんはやっと苦笑いになってくれた。


「まあ、お前さんとエリーはまだ良い。……トラディスとレイザーは、ちぃっと待てや」


 いつのまにか、レイザーさんを抱えていたトラディスさんが逃げようとしていた。

 声を掛けられたトラディスさんは……くるっと振り返って、良い笑顔になるとそのまま駆け足で逃げちゃった!

 当然、ジェフさんは『待て!!』と声を上げて行っちゃったけど……。


「……馬鹿な男どもの事はほっとくに限るわ」

「「あはは……」」


 とりあえず、一件落着かな?

 あ、エディにも無事に解決したことは一応連絡しようかな?
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:427pt お気に入り:65

勇者のこども

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:426pt お気に入り:1

お兄ちゃんと内緒の時間!

BL / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:59

夫の浮気相手と一緒に暮らすなんて無理です!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:795pt お気に入り:2,710

桜天女

恋愛 / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:0

BLはファンタジーだって神が言うから

BL / 完結 24h.ポイント:106pt お気に入り:29

処理中です...