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第103話 弱い心
しおりを挟む「……落ち着いたかしらん?」
ギルマスに執務室に匿ってもらった私は……出されたお茶をすぐ飲む気にはなれなかった。
でも……だいぶ、落ち着いたかもしれない。
ギルマスに……経緯を全部話したせいか、焦っていた気持ちだけは少し凪いだと思うから。
「……ありがとうございます」
「うふふ~。可愛らしいわん? 別に逃げなくても良かったのにー」
「……つい、勢いで」
今振り返ってみれば……ジェフが呆れるような人じゃないって、再会してからのジェフを知ってわかっていても。
ついさっきの出来事だけど……私はジェフを貶したあの男達に怒り心頭で、正常な判断が出来ないでいた。
だから……逃げ出して、今の状況になっているんだもの。
「ジェフちゃんが、強い女の子の実力見ても……呆れる子じゃないのは、シェリーちゃんが一番に分かっているんじゃなぁい?」
「…………冷静になれば、ですが」
「うふふ。恋する女の子のお怒りモードだったら、しょうがない部分もあるわね~? ……今頃、めちゃくちゃ探してくれているんじゃなぁい?」
「…………多分」
幼馴染み以上に、メンバーとしては……探してくれてはいると思う。
女としては……多分、ない。
闘士としての実力は……彼にも認めてもらってはいるけど。冒険者じゃなく……一人の女には、見てもらっていないと思うわ。
だって、手を繋いだのは……はぐれないためだって言ってたし!
「う~~ん? 自信無さげだわねぇ」
「……自信無くします。冒険者としては、いいかもですけど……女らしくないですし」
「うふふ~? 強い女の子って素敵じゃなぁい? 下手に弱い子より……あのジェフちゃんが、パーティーのリーダーとして……ちゃぁんとあなたを見てくれて加入を許可したのよん? 幼馴染みだけで、普通はそれを許さないと思うわん」
「…………そう、ですけど」
元はソロ活動し続けていた、ジェフがレイザーさん達と出会ったことで変わったのは……噂を聞いた時もだが、この街で再会出来たことで……実感は出来た。
本当は……ジェフに会いたいだけで、パーティーに加入したいと言う気持ちは後付けでしかなかったのに。
昔以上に……格好よくなっていたジェフを見て、『一緒に強くなりたい!』って気持ちが芽生え……レイザーさん達の魔眼の審査に受かって、加入出来た。
しばらくはそれに満足していたのに……エリー達とも関わることが出来たことで、欲が出てしまった。
ジェフの……もっと近くにいきたいって。
エリー達にも協力してもらったことで、今日が決行日となったのに……あんな事態になったんだもの。あの男達はもう捕縛されたけど……絶対女の子らしくないって、ジェフに違う意味で感心させちゃっただけだわ!!
「……会って、ちゃんと確認したらん?」
私が縮こまっていると、ギルマスは隣に座って私の頭を軽く撫でてくれた。
エルフなため、私なんか遠く及ばない美貌の持ち主だけど……今は、故郷にいるお母さんに少し似ているなと思った。雰囲気とかが、少し。
「……けど」
「だぁって、あんなにも必死に探しているのよん?」
「え?」
今なんて?
私がぽかんとすると、ギルマスは自分の目に指を向けていた。
「精霊を向かわせたけど~、必死こいてジェフちゃんはあなたをあちこち探しているわん? 精霊越しに教えてもいいけど……あなた次第よん? 彼と向き合わない?」
「……ジェフ、が?」
どう言う意味で、そんな必死に探しているのかは……まだ知るのは、本当は怖いけど。
でも……今日のために、たくさん協力してくれた人達。それに、ギルマスもわざわざ使役している精霊を使ってくれているんだもの。
弱い心を奮い立たせて、私は……頷いた。
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