上 下
96 / 603

第96話 傍観者側

しおりを挟む
 新メンバーが……端から見てわかっていたが、リーダーに惚れていたとは。

 最初、魔眼で視た時は……追っかけか何かとも思いかけたが、リーダーのジェフの幼馴染みなのはすぐにわかり、お互いきちんと話し合った上で……ジェフは加入を認めた。

 ま、関係以前に……『魔闘士シェリー』だと俺も分かったら、納得は出来たがな? 見た目は可愛い子ちゃんだが、実はとんでもねぇ実力者とくれば……俺も異論はなかった。

 弟のトラディスは、新メンバーが増えるのには特に異論がなかったが。フランツの事を後でシェリーに教えても、特に引いてなかった。だから、ジェフの選択は正しかったと俺も納得出来たのだ。

 そして……そのシェリーだが。


「おうおう、デート計画か?」


 俺の昔馴染みのBランク冒険者のエリーから、シェリーとジェフのデート計画に協力してくれないかと、魔法蝶を飛ばして来た。俺だけじゃなく、トラディスも来て欲しいと。

 場所は、ケントんとこの『スバルのパン屋』。

 ケントも計画を知っているんで、話し合うのに場所をそこにすることになった。俺はすぐにトラディスを連れて向かったが。


「な、ななな、なんで、二人にも!?」


 シェリーには、俺とトラディスが事情を知っているのを知らなかったのか……物凄く慌てていた。


「……お前がわかりやすいぞ」


 魔眼越しの心情抜きにしても……ひと目でわかったくらいだ。トラディスは違ったようだが、知っていることを告げたら……氷が溶けるようにシェリーは床の上にへたり込んだ。


「え、え、え?」


 そんなに自分の気持ちが周囲にバレているとは思わなかっただろう。しかし、ジェフ本人には曖昧にバレているとは思っていないだろうな? 変なとこであいつは鈍いんだよなあ……。


「はいはい! シェリー、あんたの素直さは良いことよ? とりあえず……デート当日に、こっちの二人にも不自然じゃないように段取りを組んでもらわなきゃ。打ち合わせは大事よ?」

「う……打ち合わせ?」

「たしかに。普通じゃ、俺らも付いて行くか?」


 特に、トラディスはリオーネには初訪問だ。

 討伐依頼以外でも、ちょくちょく出掛けてはいるが……大抵俺とかジェフが一緒だしなあ?

 そのトラディスとは別行動にさせねぇと、シェリーとジェフは二人きりになれねぇ。


「僕らの事は気にせずに。シェリーさんは、ジェフさんと楽しんできなよ。で、頑張って告白しちゃって!」

「え~~!?」


 我が弟ながら……素直な意見過ぎだ。

 女が出来た試しはないが……ジェフや俺と出会った、あのダンジョン攻略で世話になったマシュ嬢ちゃんとは今でも魔法蝶でやり取りしてるらしいが。恋……には、発展してないだろうな?

 とりあえず……シェリーはまだ膝をついたまま立ち上がれなかった。トラディスがある意味トドメ刺したしな?


「まあまあ。いきなり告白は大変でしょうけど……シェリーさん、トラディスさんも言ったように……デート、思い切って楽しんだ方が勝ちですよ?」

「…………うぅ」


 家主のケントも、似た言葉を言ったが……どうやら、シェリーを頷かせる力はあった。似た雰囲気を持つ男二人にかかれば……まあ、頷くだろうな?

 提案者のエリーも、満足したように頷いていた。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...