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第93話 板挟みがしんどい

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 今日は……数日に一度のスバルのパン屋のお休みの日。

 仕込みも特に何もせず、普通の日常……を僕はカウルとラティストと送るのがいつもなんだけど。

 今日はちょっと、違ったんだよね?


「……シェリーさんとジェフさんですか?」

「……はい」


 今日は、『シリウスの風』の副リーダーであり、レイザーさんの弟さんであるトラディスさんが、単身で僕のところに来たんだ。

 お店はお休みだけど、魔法蝶で『会えませんか?』とお知らせが届いたんで、僕は特に用事もなかったから受けることにした。

 場所は住居スペースの客間。

 カウルはお昼寝。

 ラティストも、何かあればすぐに駆けつけてくれるけど……お疲れ気味だから、こっちもお昼寝してもらっているよ?


「……シェリーさんが、ジェフさんを好きだと言うのは見てわかりますけど」

「……僕もです」

「……逆は?」

「……つい数日前に、自覚されたようなんですけど」

「けど?」


 いいことなのに、と思っても……それだけじゃ、トラディスさんがここまで悩むわけないもんね?


「……無自覚なイチャイチャが居た堪れなくて!!」

「……あー」


 こじれてはいないだろうけど……お互い好き同士だったら、そうなるかな?

 恋愛初心者の僕でさえ、聞いててちょっと恥ずかしいと思っちゃうんだもん。


「四六時中じゃないですけど!! ちょっと目を離していたら、軽いスキンシップがぽんぽんと!! 僕とお兄さんはともかく、周りを牽制しすぎですよ!! だったら、早く告白してくっついて欲しいのに!?」

「お……落ち着いてください、トラディスさん。お茶」

「……すみません」


 温厚なトラディスさんを、ここまで掻き乱すとは……恐るべし、ジェフさん。

 たしかに……そんなしょっちゅうアピールしまくっていたら、外野は歯がゆいだけで済まないだろうなあ?

 トラディスさんには、お茶以外にもカウル特製クッキーを食べてもらうことで、ちょっとだけ落ち着くことが出来たようだ。


『ま、しゃあないやん? ジェフの旦那は旦那で、奥手やし』


 フランスパン魔剣のフランツさんは、今空いている椅子の上に横になってもらってる。

 背負ったままでも良いらしいけど、椅子に座りにくいだろうからとここに置いたわけで。


「……まあ、そうだけど」

『マスターと嬢ちゃんが仲良うしとったら、嫉妬の視線が強い強い』

「そこ! 僕はそんなつもりちっともないのに!!」

「……あ~、それは辛いですね」


 当て馬じゃないにしても、トラディスさんは板挟み状態が辛いのもあるだろう。だから、さっさとジェフさん達にくっついて欲しいんだろうね?


「……お兄さんが成り行きに任せれば良いって言うんですけど。僕は……早い方がいいと思って」

「どうしてです?」

「ジェフさんは元からですけど、シェリーさん可愛いじゃないですか? だから、狙う人が多くて多くて」

「……本音は?」

「僕を安心させて欲しいんです!!」


 わー! と泣きそうな表情になっちゃうんで……これは、まだシェリーさんが加入して一週間程度だけど、辛いんだろうなあと同情しちゃう。

 とは言え、僕も転生したてで友達はまだエディとかだし。

 ……エディに相談してみるのも良いかな?

 連絡手段は、この間来た時に魔法蝶の連絡先交換したから。
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